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「CEIPA x TOYOTA GROUP “MUSIC WAY PROJECT” Professional Seminar Public Series 5th Edition(欧米編)」イベントレポート

11月5日、音楽業界関係者向けの公開セミナー「CEIPA x TOYOTA GROUP “MUSIC WAY PROJECT” Professional Seminar Public Series 5th Edition(欧米編)」が東京・渋谷ストリームのGoogleオフィスで開催された。

海外の音楽業界で活躍する現役のビジネスパーソンを招き、海外マーケットの実情や特性、グローバル展開のヒントなどを全5回にわたって伝えてきた本セミナー。最終回となる今回は「第22回東京国際ミュージック・マーケット(22nd TIMM)ビジネスセミナー」の一環として行われ、北米をはじめとした欧米圏における音楽ビジネス戦略がテーマに。会場には海外進出を見据えるレーベル関係者などが多数詰めかけ、これまで同様にオンラインでの配信も行われた。

「CEIPA x TOYOTA GROUP “MUSIC WAY PROJECT” Professional Seminar Public Series 5th Edition(欧米編)」の様子。

熊部太郎氏(一般社団法人日本音楽制作者連盟理事)の挨拶で幕を開けたセミナーは、まず「Introduction from CEIPA」と題したブロックへ。一般社団法人カルチャー アンド エンタテインメント産業振興会(CEIPA)とTOYOTA GROUPによる「CEIPA x TOYOTA GROUP “MUSIC WAY PROJECT”」設立の思いを、武田淳一郎氏(トヨタ・コニック・プロ株式会社代表取締役社長)が改めて熱弁。日本の音楽産業の発展を応援するための共創プロジェクトであること、“人づくり(学びの機会創出)”と“場づくり(海外での活動拠点設置など)”の2軸で推進されるものであることなど基本理念のおさらいに始まり、自動車産業を根幹とするTOYOTA GROUPがなぜ音楽業界を応援するのか、これからの時代に求められる価値とは何かといった、この時代に求められる共創の姿勢に関する話題を中心にフランクな口調で雄弁に語った。

「CEIPA x TOYOTA GROUP “MUSIC WAY PROJECT” Professional Seminar Public Series 5th Edition(欧米編)」の様子。

続いて行われたメインセッション「Market Deepdive #5」には、トラックメイカー / プロデューサーのTOMOKO IDA氏(Sony Music Publishing [Japan] Inc.音楽プロデューサー)、クリエイティブとビジネスの両面で活躍するYuuta Aoki氏(Duetti音楽成長マネージャー)の2名が登壇。北米を拠点に活動する両氏が“今の米国のリアル”を実感とともに伝え、受講者をうならせた。なお、これまでの4回のセミナーで行われてきたバークリー大学教授によるビデオ講義は前回でひと区切りとなっており、今回はプログラムに含まれていない。

まず壇上に現れたIDA氏は、自身のキャリアと日米の音楽制作環境について語った。もともと日本国内で活動していた同氏は、Sony Music Publishingとの契約を機に海外での活動が増え渡米。憧れのプロデューサーにSNSでアプローチしたことがグラミー賞候補作への参加につながった経験から、積極的な行動力の重要性を強調する。また、IDA氏は日米の制作環境の違いにも言及。米国ではコライトが盛んで、特に映像音楽を作るシンクキャンプや既存曲を再解釈するインターポレーションが隆盛を極めているという。権利配分も出版社取り分が50%確保される日本の慣例とは異なり、参加した作家で均等に分割するのが一般的とのこと。最後に海外進出を目指すアーティストへのアドバイスを求められた彼女は、周囲への感謝を忘れることなく、長期的な視点で粘り強く活動し続ける覚悟が必要だと説いた。

TOMOKO IDA氏(Sony Music Publishing Japan Inc.音楽プロデューサー)(右)

続いて登場したAoki氏は、日本のアーティストが北米市場で成功するための戦略について解説。北米ではストリーミングが消費の8割を占め、マイクロジャンルの台頭が目覚ましいことからニッチな音楽にも十分なチャンスがあると氏は分析する。今後の有望な成長領域としては、ショートコンテンツや映画・広告への楽曲提供、ゲーム市場を挙げた。そのうえで成功の鍵となるのがメタデータの最適化だと強調する氏は、SpotifyやYouTubeといったプラットフォームにおいてはもちろんのこと、これからはChatGPTなどのAIに向けて情報を最適化していくことも重要だと語る。特に日本のアーティストにとって不可欠なのが“ローマ字化”であるとし、曲名やアーティスト名、歌詞をローマ字表記にすることは必須であり、できれば英訳だけでなく日本語の発音をそのままローマ字で併記することが理想的であると論じた。

Yuuta Aoki氏(Duetti音楽成長マネージャー)

メインセッションのあとにはIDA氏とAoki氏による質疑応答や、12月に4日間にわたって行われる集中ワークショップ「Intensive Workshop」に向けたバークリー大学・Emilien Moyon教授からのビデオメッセージ上映、ランチタイムを使った過去セミナーの振り返り「Reshow & Mixer」なども実施され、活発な意見交換が行われた。

「CEIPA x TOYOTA GROUP “MUSIC WAY PROJECT” Professional Seminar Public Series 5th Edition(欧米編)」の様子。
バークリー大学・Emilien Moyon教授からのビデオメッセージ上映。