RADWIMPS × YOASOBIが思いを交わし合った夜、ikura「今日が人生で一番の宝物」
RADWIMPSが10月から12月にかけてアリーナツアー「RADWIMPS 20th ANNIVERSARY LIVE TOUR」を開催中。この記事ではツアーの一環として11月24日に神奈川・横浜アリーナで行われた、YOASOBIとの対バンライブの模様をレポートする。
RADWIMPSのメジャーデビュー20周年を記念したこのツアー。全国9都市で17公演が開催され、そのうち横浜アリーナ3DAYS公演は、BUMP OF CHICKEN、Vaundy、YOASOBIをそれぞれゲストアクトとして迎えた対バン形式で行われた。24日公演にはYOASOBIが登場。怒涛の3日間となった対バン企画のラストを締めくくった。
“RAD愛”に満ちあふれた60分
メガヒット曲「アイドル」でライブの口火を切ったYOASOBI。ikuraは「大好きなアーティストRADWIMPSさんの20周年をお祝いできるということで、本当に本当に光栄に思います。ありがとうございます!」と興奮気味に挨拶し、一方のAyaseはリスペクトを込めて、あえて敬称を外し「RADWIMPSにせっかく呼んでいただいたからには、我々のできることをブチかますしかないよね」と意気込む。その言葉通り、ラウドチューン「セブンティーン」で勢いそのままにパフォーマンスを再開し、会場をワンマンライブさながらの盛り上がりに導いた。山口県出身のAyaseは青春時代を振り返り、「山口という田舎でもRADWIMPSが鳴り響いていたし、間違いなくRADWIMPSの音楽と一緒に育ってきたと改めて思う。そんなRADWIMPS大先輩……いや、RADWIMPSの20周年という記念すべきタイミングで呼んでいただけて本当にうれしいです」とコメント。最新曲「劇上」ではikuraとのツインボーカルで会場を大いに沸かせ、その後も「夜に駆ける」などヒット曲の連投でオーディエンスを熱狂させた。
ライブの終盤、ikuraは「ちょっとここで私の話というか、RADWIMPSさんへの思いをお話しできたらなと思います」と息を整えながら語り始めた。彼女がRADWIMPSの音楽と出会ったのは、中学3年生のとき。友人にRADWIMPSの楽曲「'I' Novel」を教えてもらったことがきっかけだったという。そこからはアルバムを聴き込んだり、コピーバンドで演奏したり、大人になってからはRADWIMPSの公式ノンフィクション本を読んだりと、どんどんRADWIMPSの沼にハマっていったと明かす。「とにかく学生時代からずっとずっとRADWIMPSさんの音楽に支えられて今日まで来ている、ということをまずお伝えしたいなと。本当にありがとうございます」と思いを語り、「私もいちファンとしてこのステージに立ってお祝いできることが、本当にうれしいです」と続けた。
そしてMCはYOASOBIも参加したRADWIMPSのトリビュートアルバム「Dear Jubilee -RADWIMPS TRIBUTE-」の話題へ。アジアツアー中の移動車内で企画へのオファーを聞いたそうで、ikuraは「跳んで喜んだ」と当時の心境を明かす。このときAyaseから「ikuraが思い入れのある曲をしっかりカバーさせてもらおう」と声をかけられたといい、高校1年生のときの文化祭でバンド演奏した思い出深い1曲を選んだことも語った。公演中は一貫してRADWIMPSに敬称を添えて呼んでいたが、終盤には敬称を付けずにバンド名を口にするほど気持ちが昂っていたikura。彼女はラストに「20年走り続けてきたRADWIMPSに、そしてその音楽を愛してきた皆さんに愛を込めて歌わせていただきます!!」と叫び、YOASOBIらしいデジタルサウンドにアレンジされた「会心の一撃」を伸びやかに歌い上げた。
YOASOBIから受け取った愛を音に変えて
3日間にわたり横浜アリーナを熱狂の渦に巻き込んできた対バン企画の最終日。公演中、野田洋次郎(Vo, G, Piano)は「老体に鞭打ってる」と自嘲しながらも、それをまったく感じさせないエネルギッシュなパフォーマンスを繰り広げた。ライブはニューアルバム「あにゅー」収録の「まーふぁか」などで勢いよく立ち上がり、序盤から会場を一気に掌握。今年からギタリストの白川詢をサポートに迎えた5人体制でライブを行っているRADWIMPSは、心地よいグルーヴでフロアを包み込んだ。野田は「YOASOBIがあんなステージを見せてくれて、裏で踊りまくってたらだいぶ体力を使ってしまったけど(笑)。今日はお祭りだからね。ここから家にたどり着けなくなるくらい出し尽くそうかな」と腕を振るい、新曲「賜物」の複雑な展開も華麗に乗りこなしていく。観客のシンガロングを誘いつつも、ピアノを使ったナンバーでは一転してしっとりと歌声を聴かせた。
武田祐介(B)は自身の子供がYOASOBIの大ファンであることを明かし、「帰ったら自慢しよ」と笑顔を見せる。さらにデビューからこれまでの歩みを振り返り、「簡単な道のりではなかったけれど、20年経った今も、こうして地元横浜の大切な場所である横浜アリーナのステージに立てて本当に幸せです」と感慨を述べた。また野田は、RADWIMPSを結成した年とikuraが生まれた年が近いことに触れつつも、音楽に年齢は関係ないと語る。「今日こうして同じステージに立って思いを交わし合えたことが、本当に気持ちよくて感無量です。何より、YOASOBIとRADWIMPSの音楽を受け取ってくれるあなたに心から感謝しています」と、客席へまっすぐに思いを届けた。
RADWIMPSがこの20年の間に発表してきた、ジャンルレスな楽曲たちが次々と放たれたライブ終盤戦。最後の1曲を前に改めてファンと向き合うと、野田は「飽き性で我慢強くなくて、すぐ投げ出してしまう自分なんだけど、いまだにやりたいことがあふれ返ってて、やれてないことが多すぎて。こんなにももどかしくて、悔しくて、表現できてなくて、言いたいことが言えてなくて。だから何かを成し遂げた気になんて1ミリもなってない」と率直な胸の内を語り始める。「本当に音楽でよかったと思う。もがいてる途中なんだけど、死に物狂いでなんとか形にしたものをあなたが受け取ってくれて、『RADWIMPS悪くねえじゃねえか』と言ってくれて、その言葉が僕たちを今日までつなぎ止めてくれた。あなたが聴いてくれて、あなた自身がRADWIMPSの生命維持装置になってくれて、ここまで運んで来てくれました。そういう意味での感謝なんです。本当にありがとうございます」と深い感謝を伝えた。続けてYOASOBIへの感謝も言葉にしつつ、トリビュートアルバム完成時に野田がYOASOBIの2人に“恋文”のようなメッセージを送ったというエピソードを披露。「よかったら一緒に歌ってください」という言葉から演奏した最後の曲では、ファンによる大合唱と祝福のムードが会場いっぱいに広がった。
「今日が人生で一番の宝物です」
アンコールで再び登場したRADWIMPSは、YOASOBIの2人を呼び込んで記念撮影を実施。野田と武田がYOASOBIによる「会心の一撃」のカバーを絶賛すると、Ayaseとikuraは恐縮しつつも幸せそうな表情を浮かべた。続いて野田が「Ayase君、ikuraさんをお借りして1曲いいですか。速攻でお返しするので」と声をかけ、RADWIMPSとikuraによるコラボレーションが実現。野田は「次の曲を一緒に歌いたかった」と言い、その言葉にikuraが「すでに感無量です」と返答すると、彼女の緊張した表情に客席からは「がんばれー」という声援も飛んだ。「学生時代のikuraさんにも向けて」という言葉を経て、野田がピアノで奏ではじめたのは、映画「君の名は。」の主題歌の1曲「スパークル」。野田とikuraは目を合わせながら歌声を重ね、その美しいハーモニーにオーディエンスはじっくりと聴き入った。歌唱を終えたikuraは「今日が人生で一番の宝物です」と万感の表情でコメント。対する野田も余韻が抜けない様子で「なんかもう胸がいっぱいで。絶対今日の夢でikuraさんとのデュエットが出てくる」としみじみと語った。
ラストは何度も「ありがとう」と繰り返し、会場の1人ひとりに語りかけるように歌を届けた野田。終演予定時刻が迫る中、「横アリ、すみません。20周年なんで許してください!」とパフォーマンスを続け、メジャーデビュー20周年を記念した対バンライブの幕を下ろした。
なお「RADWIMPS 20th ANNIVERSARY LIVE TOUR」は12月26、27日の東京・有明アリーナ公演まで続く。
提供元:音楽ナタリー