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「CEIPA × TOYOTA GROUP “MUSIC WAY PROJECT” Community Workshop 1st Edition(カタログ編)」レポート

音楽業界関係者向けの公開セミナー「CEIPA × TOYOTA GROUP “MUSIC WAY PROJECT” Community Workshop 1st Edition(カタログ編)」が4月10日に東京・渋谷ストリームGoogleオフィスで開催された。

「CEIPA × TOYOTA GROUP “MUSIC WAY PROJECT” Community Workshop」は、2025年に年間を通じて行われた「Professional Seminar Public Series」の流れを汲むセミナー。従来と同様の形式で実施される「Flagship Series」、昨年末にも行われた実践編「Intensive Workshop」に加え、参加者同士の意見交換を促進する場として発足した。初回にあたる今回は「カタログ編」と題し、旧譜の海外展開に関する市場動向などに関しての情報共有が行われた。

本題に入る前に、受講者へ向けてFacebookグループ「tsudoi Online β」の開設がアナウンスされた。MUSIC WAY PROJECT事務局からの各種イベントなどの情報共有を軸に、参加者の声を反映させながら内容を充実させていく方針だ。さらに、MUSIC AWARDS JAPAN 実行委員会エグゼクティブディレクターの熊部太郎氏より今年6月に開催される国内最大規模の国際音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN 2026」の詳細が伝えられたほか、YouTube Japan / Googleの⿁頭武也氏からは業界関係者と海外市場をつなぐ交流会「tsudoi'26」の活動報告も。今年1月から3月にかけてジャカルタ、マニラ、ソウルでパネルディスカッションやショーケースライブを行い活況を呈したことを受け、今年度は「Professional Seminar」との連携をより強化したうえで継続的なビジネスマッチングを目指すという。今後はこれらの情報も「tsudoi Online β」を通じて周知されていく予定だ。

「Deep Dive - The Catalog!」と題したメインセッションには、4名の識者が登壇。まず最初に、日本コロムビアの⼤⽊貴之氏が同社におけるカタログ活用戦略についてプレゼンテーションを行った。115年の歴史を持つ同社の膨大なカタログ音源を活性化させるうえで、同社では「カタデジ」(適切な権利処理やメタデータの最適化を含むカタログのデジタル資産化)と「キュレーション」(市場ニーズに合わせたプロモーション施策など)の2本柱を設定。その象徴的な事業として、1970〜80年代のカタログを海外へ発信する自社ブランド「J-DIGS」を設立した。単なる楽曲配信ブランドではなく、ライセンス、フィジカル、デジタルの3軸を統合し、地域ごとのニーズに合わせてコミュニケーション戦略を変えるなど、総合的かつ多角的にシナジーの最大化を図っている。今後はカタログだけでなく、海外の現役アーティストとも連携して相乗効果を狙っていく構えだ。

2人目のスピーカーは、ニューヨークでレコードショップ「Face Records NYC」を営む間宮祐⼀氏。アメリカ在住のため、事前収録されたインタビュー映像での登壇となった。間宮氏によると、2018年の開店当時は2割程度だった日本の音楽の売上比率が、コロナ禍と前後するシティポップブームを経た現在は8割超を占めるまでに急上昇しているのだという。アメリカの若年層では限定盤やレア盤をハイプなものとして扱う風潮があり、近年ではシティポップの枠を超え、カシオペアや高中正義などの和ジャズやJ-フュージョンへと人気が移行。さらに現在は70〜80年代を通り越して、90〜2000年代のアーティスト(Lampやフィッシュマンズ、椎名林檎)への注目も高まっているそう。間宮氏は、今後さらにカタログ音源の需要が高まるだろうとの見通しを示した。

3番手として登壇した東洋化成株式会社の竹内光悦氏は、同社におけるアナログレコードの海外出荷実績が2022年から2024年にかけて67%増加したことを報告。韓国や中国、タイ、フィリピンといったアジア各国に加え、やイギリス、フランスといった欧州圏でも日本盤の人気が高まりを見せている。その中でも特にインドネシアは“ホットな市場”で、欧米や日本からの輸入盤が現地で5000円や6000円といった価格帯であっても、若い消費者を中心に購入者があとを絶たないという。アメリカではアナログレコード全体の売上が19年連続で上昇しており、Z世代の6割が過去1年にレコードを購入したというデータも紹介。さらにはカセットテープやCDの人気も各国で再燃していることがデータとともに示され、竹内氏は「海外市場には日本市場にはない潜在的需要を秘めている日本のコンテンツがあり、レコード以外のメディア(フォーマット)でも十分に勝機がある」と結論付けた。

最後に登壇したのは、ライブプロモーター・SATORIの創始者である佟錚(トンゼン)氏。日本コロムビアの⽥中清鈴氏が聞き手を務め、インタビュー形式でプレゼンテーションが行われた。佟錚氏は中国市場における日本のカタログ音楽が公演面でも盛り上がりを見せている状況を実例を挙げながら紹介し、中でも当山ひとみ「CATHY」の爆発的ヒットに熱視線を注ぐ。また、板橋文夫や森山威男を筆頭に“和ジャズ”の人気も高まっているという。その背景には、日本の良質なカタログ音楽を“自分だけが知っている貴重な宝物”として楽しむ中国の若者の傾向と、SNS文化の浸透があると分析。現在は中国本土での興行は難しい状況にあるが、ソウルやバンコク、シンガポールなど他都市への展開も視野に入れながら日本のアーティストを現地ファンの元へ届けていきたい意向を語った。

セッション終了後には質疑応答や簡易的な懇親会が開かれ、登壇者と参加者らの交流が行われた。この「Community Workshop」シリーズは、今年度を通じて4回程度の開催が予定されている。