寺久保伶矢×Tenors In Chaos×森山威男が鳴らすジャズの可能性、3日間にわたるMAJジャズイベント「WaJAZZ」閉幕
6月13日に東京・TOYOTA ARENA TOKYOで授賞式が開催された国内最大規模の国際音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN 2026」。授賞式の開催に先駆け、アワードウィーク中の6月8日から10日にわたってスペシャルライブ「~"NOT A SCENE. A STATEMENT. | WaJAZZ"~」が、東京・ビルボードライブ東京で行われた。この記事では6月10日に開催されたDAY3公演の模様をレポートする。
「~"NOT A SCENE. A STATEMENT. | WaJAZZ"~」は国内外で活躍するジャズミュージシャンが集結し、3日間異なる内容で“日本のジャズ”を発信するスペシャルジャズライブ。最終日となるDAY3公演は「WaJAZZ & BEYOND...」と題し、ジャンルレスな独自の音楽性で注目を浴びる寺久保伶矢(Vo, Tp)、馬場智章(Sax)、陸悠(Sax)、西口明宏(Sax)の3人によるTenors In Chaos、1960年代よりジャズ界で活躍し続ける森山威男(D)の3組が出演し、“日本のジャズの歴史と、そこから拡張されていくジャズの可能性”をテーマとしたステージを繰り広げた。

「~“NOT A SCENE. A STATEMENT. | WaJAZZ”~」3日目公演の様子。
寺久保伶矢バンド
まずは寺久保率いるバンドメンバーの中田海都(G)、山本修也(B)、市川空(Key)、山近拓音(D)がステージ上に。続いて拍手に包まれながら登場した寺久保は、バンドメンバーが奏でるエネルギッシュなサウンドの中、舞台上を自由に歩き回りながら伸びやかなトランペットを響かせる。ここから続く「Anticipation」「In This Freedom」「MN's Dilemma」では、寺久保がトランペットの演奏と歌唱を自在に繰り広げ、時に楽しそうに天井を見上げながらラフに演奏を楽しんでいく。ジャズにハウスやヒップホップ、R&Bなどさまざまなジャンルを融合させたユニークなサウンドが特徴的な彼の楽曲ならではのメロウで自由な空気が、オーディエンスの体を心地よく揺らした。そして最後に披露されたのはSkaaiを迎えて制作された楽曲「My Samba」。ここで寺久保はラップパートも展開し、彼の表現者としての幅広さを印象付ける。まさに「ジャズの可能性」が提示されたところで、寺久保のターンは心地よい幸福感とともに終了した。


Tenors In Chaos
Tenors In Chaosのステージはジョン・コルトレーンの「Giant Steps」で幕開け。モダンジャズを代表するテナーサックスプレイヤーであるコルトレーンの楽曲で会場を一気にTenors In Chaosの世界に引き込んでいく。続いて須川崇志(B)の繊細かつダイナミックなベースのソロプレイに徐々に武本和大(Piano)と小田桐和寛(D)が柔らかな音像を重ね、陸が作曲した楽曲「Ringtone」がスタート。馬場、陸、西口が加わり、力強さだけではないテナーサックスの重厚なハーモニーを響かせた。観客が心地よいグルーヴに身を委ねる中、最後を飾ったのは3人の鮮やかなユニゾンで始まる「Steam Train」。ソプラノサックスに持ち替えた西口が、自由に駆け巡る高音で個性豊かな3人のサウンドをさらに彩っていく。馬場の会場を興奮の渦に巻き込むプレイ、陸の揺るぎない存在感、西口の軽やかに舞うサウンドと、終始個性豊かな音色を届けたTenors In Chaosは、大きな拍手を浴びながらステージをあとにした。


森山威男カルテット
3日間にわたるスペシャルライブのラストを飾ったのは、森山率いるカルテット。この日のタイトルにも冠されている「WaJAZZ」を代表するドラマーである森山が演奏を開始すると、観客の視線はその圧倒的な存在感に釘付けに。川嶋哲郎(Sax)、守谷美由貴(Sax)、須川が加わり、井上淑彦の楽曲「風」でカルテットならではのアンサンブルが立ち上がる。続いて森山が「ピアノがいない編成だからこそのサウンドになる曲を」を前置きして披露したのは同じく井上淑彦作曲の「遠く...」。ゆっくりと重ねられる川嶋のソプラノサックスと守谷のテナーサックスの音色、須川のアルコによる深みのある響きに森山のドラムが加わると、演奏はゆっくりと前に進んでいくように情景を描き出していく。静かな高揚感が漂い始めたところで、板橋文夫作曲の「Sunrise」で空気は一変。森山は激しいドラムプレイで飛び跳ねながらもその場を統括する求心力を示し、アップテンポなナンバーを力強く牽引していく。圧巻なドラムソロに視線が集まったあと、最後は全員が和ジャズならではのフリージャズを思わせる自由奔放なプレイを繰り広げた。そこからなだれ込んだのは「Good-Bye」。森山のプレイに導かれた情感たっぷりなカルテットのサウンドがゆっくりと観客に別れを告げ、スペシャルライブは大きな拍手に包まれながらフィナーレを迎えた。


取材・文 / 大沼花 撮影 / TAKEZO