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「MUSIC AWARDS JAPAN 2025」授賞式初日レポート|“国内最大規模の国際音楽賞”記念すべき初回セレモニー、7冠のCreepy Nutsら多くのアーティストにスポットが当たる

音楽業界の主要5団体(日本レコード協会、日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、日本音楽出版社協会、コンサートプロモーターズ協会)が垣根を越えて設立した、一般社団法⼈カルチャーアンドエンタテインメント産業振興会(CEIPA)による国内最大規模の国際音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN」。この新たな音楽アワードの今年度の授賞式が5月21日と22日に京都・ロームシアター京都で開催された。この記事では初日のPremiere Ceremonyの模様をレポートする。

「MUSIC AWARDS JAPAN 2025」Premiere Ceremonyの様子。©CEIPA /MUSIC AWARDS JAPAN2025

「世界とつながり、音楽の未来を灯す」というコンセプトを掲げて創設された「MUSIC AWARDS JAPAN」、通称MAJ。4月17日にトータル62の部門賞のノミネート作品 / アーティストがアナウンスされたのち、エントリーされたアーティストやクリエイターをはじめとする音楽関係者による投票を経て各部門の最優秀作品 / アーティストが決定した。Premiere Ceremonyでは、そのうち40部門の結果が発表された。

最優秀ジャパニーズソングアーティスト賞はMrs. GREEN APPLE

オープニングでは、BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之(Programming, B)とThe Novembersの小林祐介(Vo, G)によるロックバンド・THE SPELLBOUNDが「KICK IT OUT」を生演奏。格式高い雰囲気と独特の緊張感が漂う場内に激しいロックサウンドを充満させ、力強いパフォーマンスで記念すべきMAJ初年度授賞式の幕を開けた。なお「KICK IT OUT」はもともとBOOM BOOM SATELLITESの楽曲で、MAJのティザー映像に使用されたことを受けてこのスペシャルパフォーマンスが実現した。

THE SPELLBOUNDによるパフォーマンスの様子。©CEIPA /MUSIC AWARDS JAPAN2025

Premiere CeremonyのMCを務めるのは井桁弘恵、森香澄、谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)の3人。BGMは本授賞式のために特別に結成され、音楽プロデューサー本間昭光がバンドマスターを務めるルビー・ハウスバンドが生演奏で響かせる。この豪華な編成でいよいよ受賞作品 / アーティストが発表され、受賞者に“ルビー”のトロフィーが贈られていく。最初に表彰されたのは、最優秀ジャパニーズソングアーティスト賞に輝いたMrs. GREEN APPLE。ヒット曲を次々と放ち、瞬く間にJ-POPシーンのトップへと駆け上がった彼らは、この受賞を受けてステージへ。大森元貴(Vo, G)は「このような新たな祭典の場で、このような賞をいただけることを大変うれしく思います。曲作りは好きなので、これからも僕ら自身が楽しんでお届けできる楽曲を制作していけたらいいなと思っております」とコメントした。

Mrs. GREEN APPLE ©CEIPA /MUSIC AWARDS JAPAN2025

続いて最優秀国内ロックアーティスト賞をKing Gnu、最優秀国内ダンスポップアーティスト賞を新しい学校のリーダーズが受賞した。新しい学校のリーダーズは、MAJのイメージカラーに合わせて赤のセーラー服を身にまとって登壇。メンバーのうちSUZUKAは「踊るということは原始的な、ある種のコミュニケーション。言葉にできない感情だったり、ニュアンスを声に乗せ、気持ちを捧げるたまらないものでございます。これからも踊りを通して、ファンのみんなだったり、世界中のみんなと一体感を生み、少しでも楽しい時間が増えるといいなと思います」と今後の活動への抱負を口にした。

新しい学校のリーダーズ ©CEIPA /MUSIC AWARDS JAPAN2025

最優秀国内R&B/コンテンポラリーアーティスト賞には宇多田ヒカル、最優秀国内オルタナティブアーティスト賞には羊文学、最優秀国内シンガーソングライター賞には藤井 風がそれぞれ輝いた。ステージに登場した羊文学の塩塚モエカ(Vo, G)は「自分の内側に入って曲を作っていくということをずっとやってきたんですけど、こうやって聴いてくださっている方がいることが励みになります。これからもたくさん素敵な曲を作っていきたいと思います」と喜びを語った。

羊文学 ©CEIPA /MUSIC AWARDS JAPAN2025

・最優秀ジャパニーズソングアーティスト賞:Mrs. GREEN APPLE

・最優秀国内ロックアーティスト賞:King Gnu

・最優秀国内ダンスポップアーティスト賞:新しい学校のリーダーズ

・最優秀国内R&B/コンテンポラリーアーティスト賞:宇多田ヒカル

・最優秀国内オルタナティブアーティスト賞:羊文学

・最優秀国内シンガーソングライター賞:藤井 風

 

次に、海外楽曲カテゴリーのうち6部門の発表も行われた。受賞結果は以下の通りで、MAJが日本国内だけでなく、グローバルな目線を持った音楽アワードであることがうかがえる。今後さらに世界中から注目されていくことを期待したい。

 

・最優秀海外ポップス楽曲賞:APT. / ROSÉ & Bruno Mars

・最優秀海外ロック楽曲賞:feelslikeimfallinginlove / Coldplay

・最優秀海外ヒップホップ/ラップ楽曲賞:Not Like Us / Kendrick Lamar

・最優秀海外R&B/コンテンポラリー楽曲賞:we can't be friends(wait for your love) / Ariana Grande

・最優秀海外オルタナティブ楽曲賞:BIRDS OF A FEATHER / Billie Eilish

・最優秀K-Pop楽曲賞:Ditto / NewJeans

 

次々に発表される多種多様な賞

発表の合間にはアーティストによるパフォーマンスの時間が設けられ、会場の空気が彩られる。箏奏者のLEOは、リスペクトする坂本龍一の楽曲「千のナイフ」を巧みな演奏で披露した。その後発表されたのは以下の楽曲カテゴリー8部門。ジャンルや新旧問わず素晴らしい音楽を“賞賛”していくMAJの姿勢が、このラインナップから感じられる。最優秀ボーカロイドカルチャー楽曲賞に輝いた「千本桜」は、2011年にインターネット上で公開されて以降、多くの人々に歌い継がれているボカロカルチャーの金字塔とも言える楽曲で、授賞式のステージ上では楽曲を手がけた黒うさPによる喜びのコメントが代読された。

LEOによるパフォーマンスの様子。©CEIPA /MUSIC AWARDS JAPAN2025

・最優秀リバイバル楽曲賞:ペパーミント・ブルー / 大滝詠一

・最優秀ダンスパフォーマンス賞:オトナブルー / 新しい学校のリーダーズ

・最優秀クロスボーダー・コラボレーション楽曲賞:Feelin’ Go(o)d / 藤井 風、A. G. Cook

・最優秀インストゥルメンタル楽曲賞:aruarian dance / Nujabes

・最優秀ボーカロイドカルチャー楽曲賞:千本桜 / 黒うさP

・最優秀ミュージックビデオ賞:アイドル / YOASOBI

・最優秀ジャズアルバム賞:Step Into Paradise -LIVE IN TOKYO- / 矢野顕子、上原ひろみ

・最優秀クラシックアルバム賞:Opus / 坂本龍一

 

さらに、ミュージックシーンやリスナーと最前線で向き合っているラジオのDJ / パーソナリティ、ディレクター、プロデューサーからなるラジオ特別投票メンバーが投票するラジオ特別賞 Best Radio-Break Songとして離婚伝説「愛が一層メロウ」、2024年にライブ動員数が最も多かった国内アーティストに贈られるラージェスト・ライブ・オーディエンス賞としてWEST.が表彰されるなど、多種多様な賞の発表が続く。離婚伝説は「『愛が一層メロウ』は僕たち2人が初めて完成させた離婚伝説の始まりの曲です。自宅から発信していた曲がまだ行けていない地域にも(ラジオを通して)届いているかと思うと感慨深いです」とコメント。WEST.はステージ登壇は叶わなかったものの、「この賞は私たちWEST.ではなく、ファンの皆様1人ひとりにお送りしたいと思っております。日々温かい声援を届けていただいていることに心から感謝しております」「WEST.は今年デビュー11周年を迎えました。11年間の歩みの中で得た経験を大切にし、これからもともに笑いながら、さらなる高みを目指して進んでまいります」というメッセージが紹介された。

離婚伝説 ©CEIPA /MUSIC AWARDS JAPAN2025

・ラジオ特別賞 Best Radio-Break Song:愛が一層メロウ / 離婚伝説

・ラージェスト・ライブ・オーディエンス賞:WEST.

 

水曜日のカンパネラやFRUITS ZIPPERも登壇

続いてヒューマンビートボクサー・SHOW-GOのパフォーマンス、ルビー・ハウスバンドによるスペシャルセッションを経て、最優秀ダンス・エレクトロニック楽曲賞 in association with JDDAに水曜日のカンパネラのヒット曲「エジソン」が選ばれたことが発表された。ステージに登壇したケンモチヒデフミは「今ここにいる詩羽と前任ボーカリストのコムアイという2人の素晴らしいボーカルに出会い、ここまで来ることができました。まさかのメインボーカルが交替してしまうという大きな転機があったにもかかわらず、変わらず皆さんに音楽を聴いてもらえることに感謝しております」と感慨深い思いを述べ、詩羽は「『エジソン』はデビューして半年後に出た楽曲でヒットするのも早くて、生活が変わったことが印象に残っています」と受賞作品について語った。このほか、エンジニアなどの裏方を表彰する部門もフィーチャーされ、未来を担う多種多様なジャンルのクリエイターにスポットが当たった。

水曜日のカンパネラ ©CEIPA /MUSIC AWARDS JAPAN2025
DJ Nobu ©CEIPA /MUSIC AWARDS JAPAN2025

・最優秀ダンス・エレクトロニック楽曲賞 in association with JDDA:エジソン / 水曜日のカンパネラ

・最優秀DJ賞 in association with JDDA:DJ Nobu

・グランプリエンジニア賞 in association with PMRAJ:

「MIXER'S LAB SOUND SERIES Vol.4」より「小さな花」/ 角田健一ビッグバンド

[アナログディスク部門]

北村勝敏(カッティング・エンジニア)

内沼映二(ミキシング・エンジニア)

・ミュージックテック功労賞:一般社団法人音楽電子事業協会

 

楽曲カテゴリーのうち、最優秀国内シンガーソングライター楽曲賞はVaundy「怪獣の花唄」、最優秀アイドルカルチャー楽曲賞はFRUITS ZIPPER「わたしの一番かわいいところ」、最優秀アニメ楽曲賞はYOASOBI「アイドル」に決定。ステージに7人そろって登場したFRUITS ZIPPERからは鎮西寿々歌がメンバーを代表して挨拶し、「この賞を大切に受け止めて、アイドル文化のさらなる広がりに自信を持って、これからも“NEW KAWAII”というものを世界に、宇宙に発信していきたいと思います」と意気込みを述べた。

FRUITS ZIPPER ©CEIPA /MUSIC AWARDS JAPAN2025

・最優秀国内シンガーソングライター楽曲賞:怪獣の花唄 / Vaundy

・最優秀アイドルカルチャー楽曲賞:わたしの一番かわいいところ / FRUITS ZIPPER

・最優秀アニメ楽曲賞:アイドル / YOASOBI

 

Creepy Nutsが初日最多の7部門受賞

セレモニーが終盤に差し掛かった頃、サックス奏者の上野耕平がパフォーマンスを披露。部門賞のラインナップと同じく、授賞式のゲストアーティストの音楽性も多彩だ。上野の繊細かつ洗練された演奏にMCの谷中も聴き惚れ、興奮した様子を見せていた。

左から谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)、上野耕平。©CEIPA /MUSIC AWARDS JAPAN2025

終盤に発表された楽曲カテゴリーの受賞作品は、日本の音楽シーンを代表するアーティストによる人気楽曲ばかり。最優秀国内ロック楽曲賞にはKing Gnu「SPECIALZ」、最優秀国内R&B/コンテンポラリー楽曲賞には宇多田ヒカル「Automatic」、最優秀国内オルタナティブ楽曲賞には羊文学「more than words」、Top Japanese Song in Asiaには米津玄師「Lemon」が輝いた。

 

・最優秀国内ロック楽曲賞:SPECIALZ / King Gnu

・最優秀国内R&B/コンテンポラリー楽曲賞:Automatic / 宇多田ヒカル

・最優秀国内オルタナティブ楽曲賞:more than words / 羊文学

・Top Japanese Song in Asia:Lemon / 米津玄師

 

そしてPremiere Ceremonyの最後、以下の7部門の結果が次々に発表されたが、その受賞作品はすべてCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」。2024年1月にリリースされた「Bling-Bang-Bang-Born」は、テレビアニメ「マッシュル-MASHLE-」のキャラクターが踊る“BBBBダンス”との相乗効果により、YouTubeやTikTokなどの映像プラットフォームで人気を集め、世界的なバイラルヒットを記録した。この日最多の7つの賞を受賞したCreepy Nutsは両手いっぱいにルビーを抱えて心境を挨拶。R-指定は「こんなにたくさんの賞をいただけて本当に光栄です」、DJ松永は「マイナーなジャンルをやっているっていう自覚だったのでうれしいです」と笑顔で喜びを言葉にした。

Creepy Nuts ©CEIPA /MUSIC AWARDS JAPAN2025

・Top Japanese Song in Europe:Bling-Bang-Bang-Born / Creepy Nuts

・Top Japanese Song in North America:Bling-Bang-Bang-Born / Creepy Nuts

・Top Japanese Song in Latin America:Bling-Bang-Bang-Born / Creepy Nuts

・最優秀バイラル楽曲賞:Bling-Bang-Bang-Born / Creepy Nuts

・最優秀国内ヒップホップ/ラップ楽曲賞:Bling-Bang-Bang-Born / Creepy Nuts

・最優秀国内ダンス・ポップ楽曲賞:Bling-Bang-Bang-Born / Creepy Nuts

・最優秀ジャパニーズソング賞:Bling-Bang-Bang-Born / Creepy Nuts

 

その後、高橋あず美がルビー・ハウスバンドの演奏をバックにパフォーマンスを披露。美麗でパワフルな歌声を響かせてPremiere Ceremonyの幕を閉じた。MAJは数多くの団体やレコード会社が関わる、国内に前例のない音楽アワードだ。しかし記念すべき初回の授賞式は日本の音楽シーンのさらなる殷賑を予感させる、特別な華やかさに満ちていた。

高橋あず美とルビー・ハウスバンドによるパフォーマンスの様子。©CEIPA /MUSIC AWARDS JAPAN2025