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ゆず、25年前と現在が交錯する「トビラ」リバイバルライブ 若かりしゆずとの“戦い”の結末は

ゆずの3rdアルバム「トビラ」のリバイバルライブ「ゆずの輪 Presents YUZU LIVE 2025 GET BACK トビラ Supported by ITOCHU」が10月23、25、26日に東京・有明アリーナで開催された。この記事では、ゆずのデビュー記念日にあたる10月25日公演の模様をレポートする。

「ゆずの輪 Presents YUZU LIVE 2025 GET BACK トビラ Supported by ITOCHU」の様子。

今ならできるんじゃないの?

「YUZU LIVE 2025 GET BACK トビラ」は2000年11月発売の「トビラ」と、そのアルバムを携えて行われたアリーナツアー「ゆず体育館ツアー2000~2001 “トビラ”」のリバイバルライブ。今年5月に配信リリースされ、8月にCD発売された楽曲「GET BACK」から着想を得て「現在のゆずが『トビラ』を“GET BACK”=取り戻し、表現したらどうなるか」という実験的なテーマのもと、有明アリーナを舞台に3日間にわたって行われた。

「トビラ」は北川悠仁が「僕ら自身にとっても違和感がある作品なんですよ。自分たちの中に歪みが起きたときにできたアルバムというのかな」と語るほど、ゆずのキャリアにおいて異色の作品。このアルバムに対して特別な思い入れのあるゆずっこ(ゆずファンの呼称)も多い。「トビラ」のリリース当時は、北川悠仁が23歳、岩沢厚治が24歳。岩沢は「今の我々がやったらどうなるんだろう? 今ならできるんじゃないの?という変な自信もあって。『若かりしゆず、かかってきなさい』という(笑)」とリバイバルライブに向けて期待感をあらわにしていた。

「ゆずの輪 Presents YUZU LIVE 2025 GET BACK トビラ Supported by ITOCHU」の様子。
「ゆずの輪 Presents YUZU LIVE 2025 GET BACK トビラ Supported by ITOCHU」の様子。

デビュー記念日の特別な夜に

10月25日と26日に東京・東京ドームで来日公演を行ったOASISの楽曲も流れる中、「今日はデビュー記念日。特別な夜を作り上げましょう」という開演アナウンスが響くと、ゆずっこたちの賛同の拍手が起こる。ゆずのライブでおなじみのラジオ体操第一のあと、ゆっくりと客電が落ち、時を刻む針の音がしんとした場内に響きわたる。ステージの巨大スクリーンではオープニングムービーがスタート。真っ白な“トビラ”が開いたのち、ゆずの歴史をさかのぼるように過去のライブ映像が目にも止まらぬ速さで上映された。ステージを覆う真っ白な紗幕に北川と岩沢のシルエットが投影され、幕が落ちると同時に2人の姿があらわに。そんな約25年前のツアーと同じ演出を経て、リバイバルライブは「トビラ」と当時のツアーの1曲目を飾った「幸せの扉」で開幕した。

紗幕に浮かぶゆずのシルエット。
紗幕に浮かぶゆずのシルエット。

続く「日だまりにて」でも、バンドメンバーの佐々木“コジロー”貴之(G)、種子田健(B)、松原“マツキチ”寛(Dr)、松本ジュン(Key)とともに穏やかな表情で音を重ねる北川と岩沢。そんな2人の顔つきはディストーションギターの轟音を合図にどこか張り詰めた表情へと変化する。「仮面ライター」では心の叫びを表現したような北川のシャウトや岩沢のハーモニカが入り乱れ、激しく明滅する光の演出も相まって、観客のテンションが一気に上昇。そして、亡き友人への思いを込めた「ガソリンスタンド」、旅立ちについてつづった「新しい朝」というフォーキーなバラードが届けられると、会場からは静かに拍手が湧いた。

ゆず
ゆず

ゆずのダークな世界観

2人が紡ぐ切ないハーモニーは深い余韻をもたらしたが、それをかき消すかのように歪んだバンドサウンドが会場を支配する。いくつもの炎が揺らめき、真っ赤なライトで染め上げられたステージで、ゆずは社会風刺を効かせた「何処」「通りゃんせ」を大胆にマッシュアップ。彼らのパブリックイメージとは異なるダークな世界観でオーディエンスを惹き付けた。

北川悠仁
北川悠仁

感傷的なムードの「ねぇ」を披露後、「飛べない鳥」「心のままに」を通じて聴くものを鼓舞するようにアコギを力強くストロークするゆず。彼らの進化を象徴するような和テイストの最新曲「尤」、場内に一体感を生み出す「T.W.L[Y.Z ver.]」「嗚呼、青春の日々」もパフォーマンスされ、アリーナが興奮に包まれる中、リバイバルライブ開催のきっかけとなった「GET BACK」へ。冒険の始まりを華やかに彩るような生き生きとしたアンサンブルが場内を満たし、曲の終わりと同時に客電が落ちて本編が終了した。

岩沢厚治
岩沢厚治

若い自分たちが恐れなくひたむきに過剰なくらい生きる力をぶつけた

ここまでMCを一切挟むことなく、真摯に楽曲と向き合った北川と岩沢。アンコールでようやく口を開いた北川は「ちょっと、いつもとは違う雰囲気だったと思います。楽しんでいただけたでしょうか? せっかくのアンコールなので思いっきり楽しんでください」と観客に語りかけ、満面の笑みで「夏色」とタイトルを叫び、「ソレソレソレソレ!」と声を張り上げる。おなじみのイントロが始まると銀テープが宙を舞い、ゆずっこはライブグッズのタンバリンを鳴らして演奏に参加。ゆずは「リーダー」「サブリーダー」と呼び合いながらご機嫌なムードで歌声を届けた。

銀テープが舞う有明アリーナ。
銀テープが舞う有明アリーナ。

ライブは残すところあと1曲。北川は改めて「トビラ」への思いを口にする。「いろんな環境が変わっていく中で、もがきながらこのアルバムを作りました。恥をかなぐり捨てて、『自分たちは存在してるんだ』と必死になって表現したアルバムです。それから、なんとなくこのアルバムに蓋をして、あまり振り返らないで、やってきましたが、『GET BACK』をきっかけにいろんなことを振り返るチャンスがきて。若い自分たちが恐れなくひたむきに過剰なくらい生きる力をぶつけたこのアルバムと向き合って、とっても圧倒されました。『若いゆずもなかなかやるじゃないか』と。でもライブをやってみてわかったのは、今のゆずのほうが圧勝でした」と言う北川の言葉に、岩沢はガッツポーズで反応した。また、公演当日の10月25日にデビュー28周年、29年目に突入したことから、北川はファンに感謝の言葉を送りつつ、「『トビラ』というアルバムを作らなかったら、29年目は間違いなくなかったと思います」と断言した。

「ゆずの輪 Presents YUZU LIVE 2025 GET BACK トビラ Supported by ITOCHU」の様子。
「ゆずの輪 Presents YUZU LIVE 2025 GET BACK トビラ Supported by ITOCHU」の様子。

ラストソングは「トビラ」の最後に収録されている、当時のツアーを締めくくった「午前九時の独り言」。平和や愛と向き合った7分にもわたるこの曲を歌い終えたゆずは、オフマイクで「ありがとうございました!」と感謝の言葉を叫んだ。2人が去ったあとのスクリーンには「またあおう ゆず」という直筆メッセージが映し出された。

ゆずは12月3、6、8日にアジアツアー「YUZU ASIA TOUR 2025 GET BACK Supported by ITOCHU」を、13日と14日に長崎・長崎スタジアムシティHAPPINESS ARENAで平和への祈りを込めたスペシャルライブを行う。2026年5月からはキャリア初の弾き語りアリーナツアーに臨む。

ゆず
ゆず

セットリスト

「ゆずの輪 Presents YUZU LIVE 2025 GET BACK トビラ Supported by ITOCHU」2025年10月25日 有明アリーナ

01. 幸せの扉
02. 日だまりにて
03. 仮面ライター
04. ガソリンスタンド
05. 新しい朝
06. 何処~通りゃんせ(TOBIRA Mashup)
07. ねぇ
08. 飛べない鳥
09. 心のままに
10. 尤
11. T.W.L[Y.Z ver.]
12. 嗚呼、青春の日々
13. GET BACK
<アンコール>
14. 夏色
15. 午前九時の独り言

ライブ情報

YUZU ASIA TOUR 2025 GET BACK Supported by ITOCHU

2025年12月3日(水)香港 AXA Dreamland
2025年12月6日(土)上海 Shanghai Delta Music Park
2025年12月8日(月)台北 Zepp New Taipei

YUZU JAPAN LIVE 2025 GET BACK Supported by Japanet

2025年12月13日(土)長崎県 長崎スタジアムシティHAPPINESS ARENA
2025年12月14日(日)長崎県 長崎スタジアムシティHAPPINESS ARENA

ゆず 弾き語りアリーナツアー 2026

2026年5月4日(月・祝)宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ
2026年5月5日(火・祝)宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ
2026年5月16日(土)愛知県 日本ガイシホール
2026年5月17日(日)愛知県 日本ガイシホール
2026年5月23日(土)広島県 広島グリーンアリーナ
2026年5月24日(日)広島県 広島グリーンアリーナ
2026年5月30日(土)長崎県 長崎スタジアムシティ HAPPINESS ARENA
2026年5月31日(日)長崎県 長崎スタジアムシティ HAPPINESS ARENA
2026年6月6日(土)神奈川県 Kアリーナ横浜
2026年6月7日(日)神奈川県 Kアリーナ横浜
2026年6月13日(土)北海道 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
2026年6月14日(日)北海道 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
2026年6月23日(火)大阪府 大阪城ホール
2026年6月24日(水)大阪府 大阪城ホール
2026年7月11日(土)福岡県 マリンメッセ福岡
2026年7月12日(日)福岡県 マリンメッセ福岡
2026年7月18日(土)福井県 サンドーム福井
2026年7月19日(日)福井県 サンドーム福井
2026年7月24日(金)神奈川県 横浜アリーナ
2026年7月25日(土)神奈川県 横浜アリーナ
2026年7月26日(日)神奈川県 横浜アリーナ

提供元:音楽ナタリー