「MUSIC AWARDS JAPAN -Deep Insights-」第6回、Zeebraが語る「最優秀ヒップホップ / ラップ楽曲賞」「最優秀DJ賞」
国内最大規模の音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN」。音楽業界の主要5団体(日本レコード協会、日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、日本音楽出版社協会、コンサートプロモーターズ協会)が設立した一般社団法人カルチャー アンド エンタテインメント産業振興会(CEIPA)の主催により、「世界とつながり、音楽の未来を灯す。」をコンセプトに掲げて2025年に新設された。
2年目となる今年は、6月13日に東京・TOYOTA ARENA TOKYOで授賞式が開催される。昨年より規模を拡大し、主要6部門(最優秀楽曲賞、最優秀アーティスト賞、最優秀ニュー・アーティスト賞、最優秀アルバム賞、Best Global Hit from Japan、最優秀アジア楽曲賞)を含む全77部門が設けられた。
授賞式に先駆け、MUSIC AWARDS JAPAN / CEIPAのYouTube公式チャンネルでは番組「OTOMO presents MUSIC AWARDS JAPAN -Deep Insights-」を配信中。「今、音楽シーンでは何が起こっているのか?」をテーマに、MCを務めるハリー杉山が毎回異なる有識者をゲストに招いて各音楽ジャンルの“現在”を解き明かすトーク番組だ。
「ヒップホップ」と「ラップ」の定義
今回のテーマは「最優秀ヒップホップ / ラップ楽曲賞」。“ヒップホップ・アクティビスト”の肩書で活動するZeebraをゲストに迎え、改めて「ヒップホップとは何か」を根本から問い直すとともに、その現状や展望について語られた。なおヒップホップ・アクティビストという肩書は、ヒップホップ文化を広めること、その文化を用いて社会に貢献することの2点が活動の軸になっていることに由来するという。
まずハリーが「ヒップホップ」と「ラップ」の定義について切り出すと、Zeebraは「両方同じ意味なんじゃないかと思う人が多いと思うんだけども、ラップはリズムを中心とした言葉のアートで、ヒップホップは文化の総称」であると解説。ヒップホップ文化はラップ、DJ、ブレイキン(ブレイクダンス)、グラフィティアートという4大要素によって形成されると一般的に考えられており、つまりラップはヒップホップの一要素ということになる。現代ではヒップホップ以外の音楽ジャンルでラップの手法が取り入れられるケースも非常に多くなっているが、Zeebraは「ヒップホップ文化だけに囚われず、周りにあるものまで引っくるめて『ヒップホップ / ラップ』とするのが一番語弊がないんじゃないかな」と「MAJ」におけるセグメンテーションの妥当性を説いた。
またZeebraは、一般社団法人JDDA(Japan Dance Music & DJ Association)理事としての立場から、DJの社会的地位の向上にも言及。2016年の風営法改正以前、深夜のクラブでDJをすることは法的にグレーな状態にあり、DJの社会的地位は低かったという。次世代が誇りを持って活動できるよう、行政や政治家との対話を通じて環境整備に尽力してきた彼は、コロナ禍におけるフリーランスへの補償交渉などを通じて行政との連携を強めてきた。現代のDJは単なる娯楽の提供者ではなく、文化的な価値を持つ職業として認識されつつあるとの見解を示した。

Zeebraが「最優秀ヒップホップ / ラップ楽曲賞」ノミネート楽曲に言及
続いて2人のトークは、先般発表されたMAJ2026の「最優秀ヒップホップ / ラップ楽曲賞」ノミネート楽曲の話題に。多様な活動スタイルを持つアーティストたちの楽曲が並ぶリストを一瞥したZeebraは、「いい感じのバランスだなと思いますね」と現在の日本のヒップホップ / ラップシーンの層の厚さに目を細める。
YZERR、LANA、JP THE WAVY & ¥ellow Bucks「Miss Luxury」は、DJ PMXによるかつての名曲をリメイクした作品。Zeebraは、USヒップホップに通ずるサンプリング文化や歴史の継承を日本の若い世代が実践している点を高く評価した。「99 Steps (feat. Kohjiya, Hana Hope)」がノミネートされたSTUTSについては、ビートメイカー、プロデューサーとして大規模ワンマン公演を成功させた点に触れ、「我々の業界の中に今までいなかった」存在であると舌を巻く。「トップライン作らせたらマジでうまい」と評するKohjiyaの名前も挙げつつ、「このシーンを動かす側っぽいやつだよね」と最大限の賛辞を送った。
Creepy Nuts「doppelgänger」に話が及ぶと、「Creepyは本当に素晴らしい。コーチェラも大成功だし、ニューヨークのワンマンも大成功だし……この野郎、お前ふざけんなよ! 俺たちがやりたかったことを!」と冗談めかしつつ、「そういう時代が来てくれてホントうれしい」と日本発ヒップホップユニットの世界的成功を喜ぶZeebra。また同楽曲のストイックなサウンドメイクに関しては、自身の楽曲「MR.DYNAMITE」を引き合いに出し、「もし一般的にウケる歌謡曲やJ-POPに寄せた音を作って、それで売れたら俺は一生それをやらなきゃいけなくなる。そんなもん絶対やりたくねえと思ってたから真逆を行った。もしかしたらあいつらも、同じような感覚でそうしてるような気もする」と彼らの反骨精神に思いを馳せた。
同ノミネートには、ちゃんみな「WORK HARD」、RIP SLYME「どON」も名を連ねており、誰が受賞するのかは「全然わかんないよ」と、ラインナップの充実ぶりにZeebraは目を丸くする。このうち、昨年オリジナルメンバー5人で1年間限定の再始動を果たしたRIP SLYMEについては、「外野があまり勝手なことを言うべきじゃないと思ってたけど、やるらしいよと聞いて『マジか! よかったよかった』ってなったし」と、グループ活動を継続することの価値と困難に言及しながら率直な心境を口にした。

最優秀DJ賞は「面白いラインナップ」
「MAJ」には「最優秀ヒップホップ / ラップ楽曲賞」のほかに、Zeebraが理事を務めるJDDA共催の「最優秀DJ賞 in association with JDDA」が設けられている。本賞にノミネートされた5組についてZeebraは、「面白いラインナップなんですよ」と熱弁。まずジャンルがバラバラであるうえに、「思いきりドメスティックでバッコリやってるタイプ、海外でバチバチのタイプ、両方イケるタイプまで」さまざまなスタイルの注目アーティストがそろい踏みなのだという。
R&B DJとしてトップを走り続けるDaBook、DJとして初の東京・日本武道館単独公演をDJ CHARIとともに成功させたDJ TATSUKI、知識と技術の両面で世界的な評価を受けるDJ KOCO aka SHIMOKITA、そして「コーチェラ・フェスティバル」出演など海外でも存在感を示し「今どう考えても世界で一番イケてる日本人DJ」だという¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$Uと、紹介する言葉に熱が入り続けるZeebra。現在の日本のDJシーンが有する多様性と水準の高さが存分に反映された、要注目のノミネートだと太鼓判を押した。
そしてハリーからの「素朴な疑問なんですけど、Zeebraさんは新しい音楽とはどういうふうに触れ合ってるんですか?」との質問に対しては、彼は自身のラジオ番組を通じて毎日新しい曲に触れていると回答。ゲストに招いたアーティストのアルバムを聴き込み、本人と直接対話することで、楽曲の背景にあるストーリーを理解する過程を重視しているという。それこそがより深いヒップホップの楽しみ方であると論じる彼は、「音楽なんだから音だけが勝負だろと思うところもあると思うんだけど、その人のバックグラウンド、友達付き合い、趣味、全部が音楽だと思ってくれたら、もっと楽しめる」とよどみない口ぶりで力強く言い放った。
