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Adoが7万人の前で誓った“歌い手”としての覚悟、まふまふやオーケストラもサプライズ登場した日産スタジアム公演

Adoが国内最大のキャパを誇る神奈川・日産スタジアムで、7月4、5日の2日間にわたって単独公演「Ado STADIUM LIVE 2026『Ao』」を開催。1日7万人、トータルで14万人の観客を動員した。

左からAdo、まふまふ。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])

2月に発売された自伝的小説「ビバリウム Adoと私」の主人公・沢木アオの名を冠したこの公演。小説ではアオという少女が表現者・Adoへと成長していく姿が描かれているが、このライブでもまた、Adoは“素顔の自分”を内面からさらけ出すようなステージを作り上げた。セットリストは初日と2日目で異なり、一部の楽曲が変更されたが、本稿では5日公演の模様をレポートする。

確かな実力を印象付けたファントムシータ

雨予報だったこともあり、多くの観客が空模様を気にしていたこの日。運よく雨粒が落ちることはなく開場時間を迎えたが、曇天がスタジアムを覆っていた。そんなどこか不穏な天気の中、まだ客席が埋まりきらない会場に、恐怖に怯えるような女性の叫び声が響き渡り、これを合図にオープニングアクトを務めるファントムシータのライブがスタートした。

彼女たちは「ホラークイーン」「キミと××××したいだけ」「おともだち」と、ホラーテイストな独自の世界観を持つ楽曲を連発。まるで何かに取り憑かれたような迫力あるボーカルと、力強くも気品のある華麗なダンスで、広大なスタジアムを瞬時に自分たちの空気へと染め上げる。

そんな狂気的なパフォーマンスの一方で、MCでは百花が「緊張しているんですが、この場をお借りして皆さんにパフォーマンスを届けることができて本当に幸せです!」と初々しい笑顔を見せ、凛花も「少しでもいいなと興味を持ってくださった方は、ライブもたくさん出演しますので、ぜひ来てくださるとうれしいです」とアピール。最後に4人は「ゾクゾク」を歌い上げ、短い出演時間ながらもアイドルグループとしての確かな実力を印象付けてステージをあとにした。

スタジアム上空へ向かって高く噴き上がる大量の水

そして、いよいよAdoのライブが幕を開ける。ボックスの中に姿を現した彼女が1曲目に歌ったのは、自身の生き様を映し出すような「0」。多くのファンの予想を覆す意外な選曲に大きな歓声が上がった。さらにそのままノンストップミックスのように「うっせぇわ」へと突入。生バンドの轟音をさらに加速させるような激しい映像演出が展開され、ステージ前方では噴水のように大量の水が高く噴き上がる。そんな激しさを増すサウンドの中で響くのは、ほとんど絶叫のようながなり声。それでも決して歌としての輪郭を失わない、人間離れしたハイクオリティなボーカル表現はまさにAdoならではだろう。

「Ado STADIUM LIVE 2026『Ao』」の様子。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])
「Ado STADIUM LIVE 2026『Ao』」の様子。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])

曲が終わるのと同時に噴水はスタジアム上空へ向かってさらに高く噴き上がり、大量の水しぶきが会場をクールダウンさせる。しかし客席の熱気は下がるどころか「レディメイド」でさらに上昇。続く「ギラギラ」ではボックスの中でAdoが舞うように踊り、シルエットだけでパフォーマーとしての存在感を見せつけた。「うっせぇわ」「レディメイド」「ギラギラ」と、メジャーデビュー後の1stシングルから3rdシングルまでを時系列でたどるような構成は、まるで歌い手として駆け上がっていった初期の歩みを再現するかのよう。しかしその後に流れた映像では、薄暗く狭い部屋で「私は歌い手じゃない」などとSNSへの書き込みを思わせる言葉をつづる、その成功の裏側にあった苦悩や葛藤を抱くようなAdoの姿が映し出された。

Ado(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])
Ado(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])

噴き出る火花に囲まれながら「逆光」を歌ったAdoは、そこから「綺羅」「エンゼルシーク」とロックチューンを連発。ダイナミックなバンドサウンドと渾然一体になったエモーショナルな歌声が、広大なスタジアムを埋め尽くす観客を圧倒する。ボックスの中に寝転びながら歌った「ラッキー・ブルート」、気迫に満ちた絶唱を聴かせた「ルル」を経て、「アイ・アイ・ア」ではマリオネットのようなダンスを披露しながら、Adoは7万人のオーディエンスとコール&レスポンスを繰り広げた。

「アイ・アイ・ア」を歌うAdo。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])
「アイ・アイ・ア」を歌うAdo。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])

ステージに現れたのは数十人編成のオーケストラ

ステージ床から5本指の手のひらを思わせる炎が噴き出すと、それを合図に「Tot Musica」をスタートさせる。シャウトに合わせて床や天井から何度も炎が噴き上がり、まるでAdo自身が炎を操っているかのように錯覚させた。曲が終わるとAdoを入れたままボックスがリフトアップし、その下から数十人編成のオーケストラと指揮者が登場。「Tot Musica」の禍々しい空気を浄化するような壮麗な響きが会場を包み込み、景色は一変する。バックバンドにオーケストラを加えたゴージャスな生演奏を背にして披露されたのは「私は最強」だ。思わぬ展開に客席から驚きと歓喜の声が上がった。

「Ado STADIUM LIVE 2026『Ao』」の様子。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])
「Ado STADIUM LIVE 2026『Ao』」の様子。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])
オーケストラの演奏を率いて歌うAdo。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])
オーケストラの演奏を率いて歌うAdo。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])

これを皮切りに「春に舞う」「エルフ」「風のゆくえ」と、フィルハーモニーを率いた美しく壮大な演奏でバラードが続く。ちょうどこのタイミングで日が落ち始めたため、観客が手にする制御ペンライトの光がそれまで以上に存在感を増し、スタジアム全体が一体感に包まれていた。そしてその幻想的な光を前に、「風のゆくえ」のラストではAdoが放った力強いアカペラが夜空の彼方まで響き渡り、多くの観客の胸を打った。

「春に舞う」のパフォーマンスの様子。(Photo by Mari Kinoshita)
「春に舞う」のパフォーマンスの様子。(Photo by Mari Kinoshita)

バンドメンバー紹介のパートで高慶"CO-K"卓史(G)、KOBY SHY(B)、森田龍之介(Dr)、岡田基(Key)が熱いセッションを繰り広げたのち、Adoはついにボックスから外へ。ステージに降り立った彼女は、のびのびと解き放たれたように自由に踊りながら「ショコラカタブラ」を歌い、開放感あふれるステージに感化されるようにオーディエンスもヒートアップしていく。

「Ado STADIUM LIVE 2026『Ao』」の様子。(Photo by Yasuyuki Kimura)
「Ado STADIUM LIVE 2026『Ao』」の様子。(Photo by Yasuyuki Kimura)

そしてここから、GigaとTeddyLoidのコンビが楽曲提供した「踊」「モンストロ」「唱」を怒涛の勢いで3連発。ステージ上で水や炎が次々と噴き上がるのを前に、オーディエンスは盛大なシンガロングを響かせながら、我を忘れたように全力で踊っていた。なお「モンストロ」は8月7日公開の映画「ブルーロック」の主題歌として書き下ろされた新曲で、フルサイズで披露されたのはこの公演が初。ラテンのサウンドを取り入れたダンストラックがライブ映えしていた。

「モンストロ」のパフォーマンスの様子。(Photo by Mari Kinoshita)
「モンストロ」のパフォーマンスの様子。(Photo by Mari Kinoshita)

Adoがトロッコに乗って観客の至近距離に接近

ライブ本編が残すところあと1曲になったところで、Adoは「私は、そしてアオは、いつか自分のことが好きになれるその日まで歌い続けようと思います。皆さんの脇役として、ずっと心のそばでつながっていられるような歌を歌い続けます」と力強く宣言。再びオーケストラを迎えて「新時代」が演奏され、制御ペンライトで虹色に染まった客席を見渡しつつ、Adoは楽しげにステップを踏みながら歌ってライブ本編を締めくくった。

オーケストラの演奏を率いて歌うAdo。(Photo by Yasuyuki Kimura)
オーケストラの演奏を率いて歌うAdo。(Photo by Yasuyuki Kimura)

アンコールの1曲目は、昨年末からAdoバージョンがオンエアされているテレビアニメ「ちびまる子ちゃん」のテーマソング「おどるポンポコリン」。Adoはトロッコに乗ってアリーナ席の外周を回りながら、観客との至近距離でうれしそうに歌う。その周囲ではファントムシータのメンバーと、まる子と花輪クンの着ぐるみが練り歩き、客席にバズーカを撃つなどして観客とのコミュニケーションを楽しんだ。

Adoを乗せたトロッコと、その周囲を歩くファントムシータ、まる子、花輪クン。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])
Adoを乗せたトロッコと、その周囲を歩くファントムシータ、まる子、花輪クン。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])

そんな予想外の演出に客席が沸く中、さらにトロッコに乗ったままAdoは、Nintendo Switch用ソフト「リズム天国 ミラクルスターズ」のゲーム内音楽としてつんく♂が作詞作曲を手がけた、7月3日に配信されたばかりの新曲「Love me forever!」もお披露目。さらに、自虐的な歌でありながらお祭り騒ぎになった「アタシは問題作」、この日の盛り上がりを更新するほどのコール&レスポンスが繰り広げられた「FREEDOM」と、トロッコがアリーナを1周する間に計4曲が披露された。

Adoを乗せたトロッコ。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])
Adoを乗せたトロッコ。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])

「一番尊敬する歌い手」とのまさかのサプライズ共演

「次は、私が一番尊敬する歌い手さんの曲です」。そんな紹介から始まったのは、2022年にリリースされたまふまふのトリビュートアルバムにて、Ayase(YOASOBI)とのコラボレーションでカバーした「立ち入り禁止」だった。まふまふへの深いリスペクトを、歌い手として渾身の力で表現したAdo。歌い終えると、続けてまふまふが作詞作曲を手がけた「心という名の不可解」のイントロが流れ始める。すると、Adoの隣にもう1つのシルエットが浮かび上がった。まさかの、まふまふ本人の登場だ。

左からAdo、まふまふ。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])
左からAdo、まふまふ。(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])

サプライズ続きだったこのライブにおいても、ひと際衝撃的なこの光景に、スタジアムはどよめきに包まれる。鋭く響くハイトーンボイスで掛け合いを繰り広げるAdoとまふまふ。並び立ち、ラストは互いを見つめ合いながら「心という名の不可解」を歌う2人のシルエットには、どこか神々しさすら感じさせるものがあり、オーディエンスの目は釘付けになった。歌い終えたまふまふは、青いペンライトで埋め尽くされたスタジアムを見渡し、「とんでもなく広い!」とびっくり。これに対してAdoは、素直な思いを語った。

「私は歌手ではなく“歌い手・Ado”を名乗ってきました。それはたくさんの歌い手の先輩が築き上げてきた伝統があったからで、その中でも最も影響を受けたのがまふまふさんです。先陣を切っていろんなものを築いてくれたと思います。今日は私のライブにゲストとして来ていただきましたが、これはまふまふさんの景色と言っても過言ではないと思います」

その言葉を受けたまふまふも、力強く言葉を返す。

「この身一つで、日産スタジアムというとんでもない会場を沸かせてしまう。なかなかできることじゃない。Adoさんはよく『ほかの歌い手さんたちが盛り上げてくれたから今の自分がある』っておっしゃるんですが、歌い手シーンも、ネットシーンも、今日の音楽シーンも、間違いなく引っ張っているのはあなたです。僕は、自分の曲を聴いてくれていた人からこんな大スターが現れて、世界を変えるくらい羽ばたいてくれて、これ以上の幸せはないです。ありがとう!」

皆さんを救うことができるなら、私はまだAdoとして歌い続けたい

恐縮しながらも、涙声でまふまふに何度も感謝の言葉を口にするAdo。彼をステージから送り出したあとで、彼女はさらに胸の内にある思いを口にし始めた。

「私は本当に歌い手が大好きで、ずっと『歌手になったほうがいいんじゃないか』って何度も言われてきました。それでも私が歌い手を名乗りたいと思ってきたのは、やっぱり私自身が歌い手というものに救われてきたからで、その恩返しがしたいという気持ちからでした」

Ado(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])
Ado(Photo by Viola Kam[V’z Twinkle])

言葉を重ねるうちに徐々に気持ちが高ぶっていくAdo。涙で声を詰まらせながら、彼女は心の内側にある言葉を絞り出していく。

「もしかしたら私という存在は、誰かにとって邪魔でノイズのようなものなのかもしれない。誰かを不幸にしてしまっているのかもしれない。そんな自分が大嫌いで、何もできないままずっとそう思って育ってきました。だから死んだほうがいいと思ってしまうこともあるけれど、そう思ってしまう自分もすごく嫌で……」

自身の弱さを隠すことなくさらけ出すAdo。客席の誰もが息を呑んで見守る中、彼女は目の前を埋め尽くす観客1人ひとりと約束するように、力強く宣言した。

「だけど私は、歌っているときは本当に自由なんです。本当に幸せで、そんな歌を皆さんに聴いていただけることが、心からうれしい。私の歌で皆さんが喜んでくれることが、生きていてよかったと思わせてくれます。死ななくてよかった、生きていてよかったと思えるんです。もしこの命が誰かの役に立っているなら、誰かを救えるなら、私はこれからも歌い続けたい。どれだけ離れていたとしても、心のそばにいます。笑顔とか勇気とか、そういうものはあげられないかもしれないけれど、怒りとか悲しみとか苦しみとか、そういう暗い感情の居場所になりたいと思っています。それで皆さんを救うことができるなら、私はまだAdoとして歌い続けたいです」

そして「ちっぽけで何もできない私から、皆さんの人生の脇役から、最後の曲です。聴いてください」と告げ、Adoは魂の声を吐き出すような全力のパフォーマンスでラストナンバー「ビバリウム」を熱唱。アリーナへ向けて銀テープが発射され、何発ものカラフルな花火が爆音を出しながら夜空を彩る中、自身最大規模の単独公演に幕を下ろした。

「Ado STADIUM LIVE 2026『Ao』」の様子。(Photo by Yasuyuki Kimura)
「Ado STADIUM LIVE 2026『Ao』」の様子。(Photo by Yasuyuki Kimura)

セットリスト

「Ado STADIUM LIVE 2026『Ao』」2026年7月5日 日産スタジアム

ファントムシータ

01. ホラークイーン
02. キミと××××したいだけ
03. おともだち
04. botばっか
05. もーいーかい?(※7月4日公演は「魔性少女」)
06. 薔薇色の月
07. ゾクゾク

Ado

01. 0
02. うっせぇわ
03. レディメイド
04. ギラギラ
05. 逆光
06. 綺羅
07. エンゼルシーク
08. ラッキー・ブルート
09. ルル
10. アイ・アイ・ア
11. Tot Musica
12. 私は最強
13. 春に舞う
14. エルフ(※7月4日公演は「永遠のあくる日」)
15. 風のゆくえ
16. ショコラカタブラ(※7月4日公演は「MAGIC」)
17. 踊
18. モンストロ
19. 唱
20. 新時代
<アンコール>
21. おどるポンポコリン
22. Love me forever!
23. アタシは問題作
24. FREEDOM
25. 立ち入り禁止(まふまふ cover)
26. 心という名の不可解(with まふまふ)
27. ビバリウム

提供元:音楽ナタリー