アジアのアーティストが集結するMAJスペシャルライブ「Shibuya Sound Scramble 2026」レポート|kiyu、RIKI、7co、PompadollSの個性が交錯したTOKYO PLAYGROUND Stage
国内最大規模の国際音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN 2026」の関連イベントとして、6月11日に「MUSIC AWARDS JAPAN WEEK SPECIAL LIVE-Shibuya Sound Scramble 2026-」が開催された。「MUSIC AWARDS JAPAN」が掲げる「世界とつながり、音楽の未来を灯す。」というコンセプトにもとづき、東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE、Spotify O-WEST、Spotify O-nestの3会場にアジアのアーティストが集結。Spotify O-nestの「TOKYO PLAYGROUND Stage」では、kiyu、RIKI、7co、PompadollSの4組それぞれの個性が交錯した。

「TOKYO PLAYGROUND Stage」出演者たち。
kiyu
トップバッターを務めたのは、22歳のソロアーティスト・kiyu。ドラム、ベース、ギターをサポートに迎えた彼は、深くキャップを被り、フーディを羽織ったミステリアスな姿で登場した。そしてステージ中央のピアノに向かったkiyuが1stデジタルシングル「傷痕」でライブをスタートさせると、冒頭からハンドクラップが発生。切なくメロウでソウルフルなメロディを、はさかさと芯の強さを併せ持つ歌声が響いた。途中、スウィングジャズへと展開していくセクションもスリリングで、彼の音楽的な奥行きを印象付けた。

kiyu
続く「TOKYO OVERSELL」では、オリエンタルなムードをまとったバンドサウンドとエレクトロニックなトラックが融合。繊細なボーカルとのコントラストが鮮やかに浮かび上がった。また「惹かれあっちゃって」ではハンドマイクに持ち替えたkiyuが、緻密な音数で構築されたファンクチューンの上に、哀愁を帯びたメロディを乗せていった。彼はMCで「今年2月に台北で人生初ライブを経験して、そのあと台中でもライブをやって、今日のこのステージは日本で初めてのライブです」と挨拶。さらに「僕は群馬に住んでいて、東京の大学に新幹線で通っていたんですけど、その道すがらに書き溜めていた楽曲たちを、こうして渋谷で鳴らせることがとても感慨深いです」と喜びを語った。新曲「浮気話」ではボーカルチョップが飛び交うイントロから、セクションごとにリズムが変化する目まぐるしい展開を見せ、「Circus」ではドロップでミラーボールが回転。夢見心地の空気からサビで一気に爆発するディスコチューンでフロアを揺らした。ラストの「妄想劣等症」では、ファルセットと地声を巧みに行き来しながら、最後にエモーショナルなシャウトを響かせた。

kiyu
RIKI
続いて登場したのは、2020年に台湾・基隆で結成されたRIKI。ボーカルのRikiを中心に、サポートドラマーを含む4人編成でのライブを展開した。ストライプ柄のダブルジャケットにネクタイ、サングラスといういでたちのRikiは、シティポップやメロウソウルのフィーリングをたたえたサウンドに乗せ、マンダリン語、英語、日本語、時にフランス語も交えた歌詞を歌い上げる。その言葉の響きが、独特のエキゾチックなムードを生み出していた。
RIKI
何より耳を奪われたのは、まっすぐに伸びる澄み渡ったハイトーンボイスと圧倒的な声量。Rikiはコール&レスポンスを呼びかけながら、瞬く間にフロアを巻き込んでいく。一方で、歌詞の内容を伝えるために、漢字やひらがな、写真、イラストなどが描かれたフリップを掲げ、紙芝居のように歌を進めるユーモラスな演出も。Rikiが英語で「そろそろクリスマスシーズンですね」と冗談めかして笑いを誘ったあとは、季節外れのクリスマスソング「少ㄌ泥ㄉ板橋根本就ㄅ算耶誕城」へ。Wham!の「ラスト・クリスマス」を思わせるシンセとスレイベルの音色で、O-nestに一足早いクリスマスムードを呼び込んだ。その後、RIKIは駆け上がるストリングスサウンドが胸を締め付けるファンクソング「草莓冰淇淋加水烏龜」、ドラマティックなディスコチューン「imma臺北beach」へとつなぎ、鮮烈な余韻を残してステージを後にした。

RIKI
7co
3番手は、ボーカル・芦田菜名子と音楽プロデューサー・RYUJAによる音楽プロジェクト、7co。この日はギターとDJをサポートに迎え、「ZIDANDA」でライブをスタートさせた。ベリーショートのオレンジ髪が目を引く芦田は、キッチュでポップな映像を背負いながら、スモーキーかつキュートな歌声を響かせる。歌とラップをスムーズに行き来するグルーヴィなメロディと、スリリングなトラックが心地よく混ざり合っていた。
7co
R&Bやヒップホップのリズムをベースにした「0.0000%」では、芦田が満面の笑みを浮かべながら「ヨリを戻す確率は0.0000%」という手厳しい決別をキャッチーに歌唱。「ハナセレブ」や「残念ラインのクーポン」といった日常的な言葉を織り込んだ歌詞も、彼女のポップセンスを際立たせる。赤い拡声器を使って電話越しの声を表現するなど、小技の効いた演出も印象的だ。新曲のサマーソング「真夏のパンクリアス」では、軽やかなギターカッティング、ジャジーなコード、ソウルフルなビートによって、夏の開放感とほのかな寂しさが表現された。そして7coは疾走感あふれるディスコチューン「あっちゅうま」でシンガロングを巻き起こすと、芦田の「今日聴いてもらった音が皆さんの耳にずっと残りますように」という語りを経て、「stay tune」でステージを終えた。
7co
PompadollS
トリを務めたのは、東京発の3ピースバンド・PompadollS。「ボレロ」を思わせるマイナーでドラマティックなSEに乗ってメンバーが登場すると、クラシカルなピアノのイントロから怒涛のハードロックへとなだれ込む「怪物」でライブを開始。「ヒグレチガイ」では、セクションごとにリズムやキーが目まぐるしく変化するプログレッシブな展開を見せ、魂を振り絞るような五十嵐五十(Vo, G)のボーカルに、オーディエンスのボルテージも一気に上がっていく。

PompadollS
また「リトルワールド」では、五十嵐のファルセットに応えるように客席が拳を突き上げ、エンディングではメンバーとオーディエンスが声を重ねる。「私たちは日本のロックを聴かせたい!」という五十嵐の叫びから突入した「赤ずきんはエンドロールの夢を見るか?」では、赤い照明の下、スリリングなロカビリーテイストのサウンドが炸裂。青木のハードなギターリフにオイコールが巻き起こった。
さらに“サウンドスクランブル”と称してギターとピアノが怒涛のソロバトルを繰り広げると、フロアの熱気はますます上昇する。ラストの「スポットライト・ジャンキー」では、「ひとつになれますか、渋谷ー!」という五十嵐の呼びかけに応え、観客が拳を掲げてシンガロング。鳴り止まないアンコールを受けて再びステージに戻ったPompadollSは、「魔法のランプ」を力強く鳴らし、この日の幕を閉じた。
ジャンルも言語も国境も越えて、多様な音楽が渋谷の夜に響き合った一夜だった。

PompadollS
取材・文 / 黒田隆憲 撮影 / Mizuki Tsuji