目覚ましく自らの表現を更新し続ける米津玄師|「MUSIC AWARDS JAPAN 2025」主要部門ノミネートアーティストを解説
音楽業界の主要5団体が垣根を越えて設立した、一般社団法⼈カルチャーアンドエンタテインメント産業振興会(CEIPA)による国内最大規模の国際音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN」(MAJ)。この新たな音楽アワードの記念すべき第1回の授賞式が、いよいよ5月21日と22日に京都・ロームシアター京都で行われる。
先日一挙に発表された「MUSIC AWARDS JAPAN 2025」のノミネート作品 / アーティスト。MAJの公式メディアOTOMOでは授賞式の開催に向け、主要部門のうち最優秀楽曲賞、最優秀アーティスト賞、最優秀アルバム賞にノミネートされたアーティストや作品をピックアップし、その特長を紹介していく。この記事では2024年8月発売の「LOST CORNER」が最優秀アルバム賞にノミネートされた米津玄師をフィーチャーする。
文 / 柴那典
いちミュージシャンというよりも、今の日本のポップカルチャーを象徴する存在と言っていいだろう。ここ数年、米津玄師は映画「君たちはどう生きるか」、アニメ「チェンソーマン」、NHK 連続テレビ小説「虎に翼」など国民的作品の主題歌を手がけ、その高い洞察力で物語の本質を射抜きつつ大衆性も兼ね備えたヒットソングを連発。熱くエネルギッシュなロックナンバーから崇高なバラード、心地よくメロウなポップチューンなど多様なスタイルの楽曲を世に送り出してきた。最新アルバム「LOST CORNER」はそうした楽曲を多く収録した近年の集大成的な1枚。それと同時に、単なるシングル曲の寄せ集め的なものではなく、アルバムとしてのコンセプトや世界観をしっかりと伝える作品となっている。楽曲のみならずジャケットのイラストやアートワークも手がける多彩な創作のあり方もポイントだ。
その人気は国内のみならず海外にも広がっている。2022年リリースのシングル「KICK BACK」はアメリカレコード協会(RIAA)よりゴールド認定を受けた。日本語楽曲としては史上初の快挙だ。また、今年3月から4月にかけて行われたワールドツアーでは全公演がソールドアウトし国内外合わせて44万人を動員。アジア、ヨーロッパ、アメリカの各都市に熱狂を巻き起こしてきた。
同じことを繰り返さず、常に新たな領域を開拓していく創作意欲も米津のアーティストとしての特質の1つと言っていいだろう。古典落語の演目をモチーフにした「死神」、近代文学作品の一節を引用に忍ばせた「地球儀」や「さよーならまたいつか!」など、1つの楽曲から文化的な系譜をたどることのできる深みが表現に宿っているのも大きい。
2025年に入っても、「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」主題歌の「Plazma」、羽生結弦とのコラボレーションによるミュージックビデオが大きな話題を呼んだテレビアニメ「メダリスト」のオープニング主題歌の「BOW AND ARROW」と、米津は目覚ましく自らの表現を更新し続けている。未曾有の才能の持ち主だ。