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オランダと日本のクリエイターがコライトを行う「Creative Mission Japan Writing Camp 2025」イベントレポート

9月15日から18日にかけて、オランダと日本のクリエイターがコライトを行う作曲セッション「Creative Mission Japan Writing Camp 2025」が東京都内で行われた。

このイベントは、リモートでの音楽制作を通じて過去10年間アジアの音楽市場で成功を収めてきたSoepermarkt Music Publishingと、オランダのポップミュージックの国際的な地位を強化するために設立されたDutch Music Exportによって開催されたもの。日本側からはレーベルやマネジメント会社、貿易機関、音楽出版社が共同開催者として名を連ねており、CEIPA / MUSIC WAY PROJECTも機材や参加クリエイターの手配協力などで参画した。

この4日間のセッションのためにオランダからBnnyhunna、Joshua J、Joya Mooi、Julian Calor、Morgan Avenue、Pieter Perquin(Perquisite)の6名のクリエイターが来日。日替わりで参加する現地日本のアーティストやプロデューサーらと共同制作を行った。文化の異なるシーンで活躍するクリエイター同士が作業をともにすることで新たな視点や価値観に触れ、互いに知見を広げることがその主たる目的だ。

セッションの流れはおおむね以下の通り。まず午前中に参加者たちがスタジオに集合し、3チームに分かれてそれぞれスタジオ入りする。各チームには来日組のクリエイターが2名ずつ振り分けられ、国内組からはシンガーが最低1名と、プロデューサーやソングライターが数名加わる形だ。各セッションでは“そのシンガーの持ち曲”をテーマに、ゼロから新曲の制作が進められる。おおむね夕方18時ごろをメドにデモ音源の完成を目指す、1日限りのソングライティングセッションだ。念のため通訳スタッフが帯同してはいたが、今回の参加クリエイターはいずれも英語が堪能であったため、参加者同士のコミュニケーションは基本的に英語で円滑に行われた。

具体的な工程については、当然だがセッションごとにまちまち。ラップトップPC前に陣取ったトラックメイカーが中心となってビートメイクを進める作業からスタートするところは、おおむねどのチームにも共通する。しかし、繰り出されるビートに合わせてほかのメンバーが鍵盤などの楽器で実音を奏でながらベーシックなイメージを固めていくチームもあれば、中心となるトラックメイカーがエレキベースを手にラップトップとにらめっこしてリズムセクションを独力で固めてから展開させていくチーム、あるいはリファレンスとなる既存楽曲をSpotifyなどで聴き比べて「この要素を取り入れてはどうか」と話し合うチームなど、さまざまな戦術が見られた。

“DJ大国”などと呼ばれ、EDMを中心としたクラブミュージックが盛んなオランダではもともとコライト文化が定着しており、共同制作時のスタイルを確立させているクリエイターが多い。一方の日本ではまだあまりコライトが一般化しきってはおらず、特に海外作家との共作に不慣れなクリエイターが珍しくない状況だ。その文化の違いこそが、想定を超えるケミストリーを生み出す。日本のクリエイターは「共作とはこういうふうにやるものなのか」とイロハの部分から実践的に学ぶことができ、逆にオランダのクリエイターはある程度固定化されたコライトの文法を「そもそもなぜそうだったのか」と根本的な視点に立ち返って見直す機会を得ることになる。それに加え、ビートやベースライン、和声、トップライン、楽曲構成の考え方に至るまで、音楽的要素の意味合いや重みづけはシーンが違えば大きく異なるもの。自分の文脈にはないアイデアが仲間からポンポン出てくる状況に、参加者たちは大いに刺激を受けたようだ。

各日のセッション終了後には自由参加の食事会が開かれ、3日目の夕方にはリスニングパーティも催された。参加クリエイターたちは一様に「得るものの多いセッションだった」と笑顔で口をそろえる。これからの日本の音楽業界においては、こうした国際的な共同制作スタイルが珍しいものではなくなっていく。この4日間のような光景は、どんどん日常的なひとコマになっていくことだろう。