各音楽ジャンルの“現在”を解き明かす番組「OTOMO presents MUSIC AWARDS JAPAN -Deep Insights-」がスタート、みのがロック / オルタナティブを語る
国内最大規模の音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN」。音楽業界の主要5団体(日本レコード協会、日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、日本音楽出版社協会、コンサートプロモーターズ協会)が設立した一般社団法⼈カルチャー アンド エンタテインメント産業振興会(CEIPA)の主催により、「世界とつながり、音楽の未来を灯す。」をコンセプトに掲げて2025年に新設された。

世界で最も権威のある音楽賞のひとつであるグラミー賞のアジア版を目指して発足した本アワード。エントリー作品はBillboard Japanやオリコンなどの客観的な指標をもとに自動選出され、そこから投票によって各部門5作品 / 5アーティストのノミネート、そして受賞作品およびアーティストが決定する。投票を行うのは、アーティスト、クリエイター、レコード会社スタッフ、コンサートプロモーター、音楽出版社、海外音楽賞審査員など各分野の音楽関係者約5000名だ。
主要6部門(最優秀楽曲賞、最優秀アーティスト賞、最優秀ニュー・アーティスト賞、最優秀アルバム賞、Top Global Hit from Japan、最優秀アジア楽曲賞)のほか、ジャンル別に細分化された部門賞、海外の楽曲を対象とする賞、「最優秀ミュージックビデオ監督賞」「グランプリエンジニア賞」といった“裏方”を対象とする賞、一般投票による賞やカラオケ特別賞など、授賞基準は極めて多岐にわたり、今年は新たに14部門が設立される。こうした包括的かつきめ細やかなレギュレーションには、国内ポピュラー音楽賞の決定版たろうとする姿勢が明確に表れている。
2年目となる今年は、6月13日に東京・TOYOTA ARENA TOKYOで授賞式が開催される。まず3月19日にエントリーが発表され、同日に一次投票の受付がスタート。それによって決定したノミネートが4月30日に発表されたのち、5月20日まで最終投票が行われる。
「MUSIC AWARDS JAPAN」が存在する意義
これに先駆け、MUSIC AWARDS JAPAN / CEIPAのYouTube公式チャンネルで新番組「OTOMO presents MUSIC AWARDS JAPAN -Deep Insights-」がスタートした。「今、音楽シーンでは何が起こっているのか?」をテーマに、MCを務めるハリー杉山が毎回異なる有識者をゲストに招いて各音楽ジャンルの“現在”を解き明かすトーク番組だ。
初回ゲストはYouTubeチャンネル・みのミュージックを運営す音楽系クリエイター・みのを迎え、MAJの「最優秀ロック楽曲賞」「最優秀オルタナティブ楽曲賞」についてのトークを展開。昨年の振り返りや今年の展望のみならず、話題は「ロックとオルタナティブの違いとは?」といったジャンル論にまで波及した。

2人のクロストークは、「MAJ」の意義についての話題で口火が切られた。イギリスにルーツを持つハリーに敬意を表し、なおかつロック / オルタナティブが議題ということでOasisのジャージセットアップを着てきた気合十分のみのは、こうした大規模かつ権威的なアワードの設立を熱望していたのだという。
「“偉くてすごいもの”みたいなものって、実は大事だと思うんですよ。反抗したくなっちゃう対象でもあるんだけど、これまでそこが国内の音楽シーンには欠けていた。音楽が世界とシームレスにつながるこの時代、日本国内で『これがいい』というものが決まるっていうのは“背骨が通る”というか、わかりやすいじゃないですか」と主張。グローバル化著しい昨今の音楽シーンにおいて、日本が世界に示す“基準”のようなものを公式に定める意義は大きいとの見解を示した。
ハリーはそのオーソリティ性が昨年の「MAJ2025」授賞式の際に行われたゴージャスなオープニングセレモニーに表れていたと指摘し、みのもその意見に同調。Yellow Magic Orchestra「RYDEEN」を軸に、日本を代表するアーティストが次々に登場する絢爛なショーが、国の文化水準の高さを示す誇らしいものになっていたと、2人して興奮気味に声を弾ませた。
「本当に幸福な時代だと思う」
続いて2人は、昨年のノミネートを振り返る。初年度の「最優秀国内ロック楽曲賞」は、OmoinotakeやVaundy、10-FEET、Mrs. GREEN APPLEがノミネートされる中、King Gnu「SPECIALZ」が受賞。「最優秀国内オルタナティブ楽曲賞」にはTOMOO、離婚伝説、Mega Shinnosuke、jo0jiが居並ぶ中で羊文学「more than words」が輝いた。そのラインナップに「本当に幸福な時代だと思う」と目を細めるみの。自身の少年時代に売れていたアーティストにはあまり乗れなかったという彼は、得にオルタナティブ部門の顔ぶれに対して「僕が今の時代にティーンエイジャーだったら激アツだった。こういうのがオーバーグラウンドにいて、アクセスできるところにあって、アワードにもいる。その環境、超健康的だなと思うんですよね」との感慨を口にした。
また、「SPECIALZ」と「more than words」がともに2023年リリースの楽曲であることに触れ、昨年の「MAJ」は初回開催ということで受賞作の年代にバラつきがあった件に言及。今年は対象楽曲の発表時期が2025年1月27日から2026年2月22日の約1年間に限定されることから、よりリアルタイム感のある楽曲が並ぶであろうことに期待を寄せた。

日本は“いい意味でのガラパゴス”
そして話題は「ロックとオルタナティブの違いとは?」という哲学的な領域へ。みのはR.E.M.やSonic Youth、Jane's Addictionといったバンド名を挙げながら、メインストリームのアーティストとは異なるローカルなバンドが人気を博すようになっていったことがオルタナティブロックの始まりだったと解説。その潮流がのちのNirvanaやSoundgardenといったバンドに影響を与え、1990年代に最盛期を迎えたのだという。つまりグランジロックやミクスチャーロック、シューゲイザー、ブリットポップなども包括的に“オルタナ”と呼ぶのが通例となっており、幅が広すぎて一概に「こういうジャンル」と言いきれるものではないのだと結論付けた。日本のアーティストではフリッパーズ・ギターなどの渋谷系、thee michelle gun elephantやBLANKEY JET CITY、ゆらゆら帝国などのガレージ系バンド、独特の世界観を備えたフォークロックバンド・たまなども「オルタナって広く扱っちゃっていいかなとも思う」というみの。「そういう土壌がある中で、椎名林檎さんなどのメガヒットを記録する人たちもけっこうオルタナティブっていう、熱い時代だった」と90年代を総括した。要するに“オルタナティブ”とはもともと“ロック”という大きな集合の一部であり、「ロックとオルタナティブはここがこう違います」と明確に定義できるものではないということだ。
その“ロック”(ここでは“バンド音楽”とほぼ同義として扱う)自体も、世界的にはメインストリームの音楽ではなくなってきている。特に欧米のヒットチャートにおいて集団で楽器を演奏するスタイルのアーティストがほとんど見当たらなくなっている中で、なぜか日本ではロックバンドが増殖し続けている不思議な現象について、みのは「いい意味でのガラパゴス」と表現。これまでの日本の音楽業界は国内の市場規模が十分に大きいことで国外に目を向ける必要がほとんどなく、海外の潮流に影響を受けづらい独自のシーンが形成されてきたと推論を立てる。その中で、アニソン文脈以外のところから海外での評価を高めている特異な存在としておとぼけビ〜バ〜などの例を挙げ、可能性を感じる日本のバンドが次々に出てきていることをポジティブに評価した。
みのが期待を寄せるアーティスト
最後に、「MAJ2026」において「最優秀ロック楽曲賞」「最優秀オルタナティブ楽曲賞」にノミネートされそうなアーティストを問われたみのは、期待する存在として2022年にポニーキャニオンよりメジャーデビューしたポップデュオ・Bialystocksの名前を挙げる。「“逃げ”のない作曲をする人たちで、ストレートに『いいもん作ろう』って感じのアプローチなんですね。だけど聴いたことない種類の楽曲、メロディで、すごく面白いグループだと思います」と太鼓判を押した。
さらに、“オルタナティブなヒップホップ”の趨勢が注目に値すると言葉に熱を込めるみの。今年2月にリリースされたvalknee「DAMEDAME Feat. 鎮座DOPENESS」を例に挙げ、「どこまで“オルタナティブ”に入れるかって話になってきちゃうんですけど、そっちも拾っていってほしいな」と、既存ジャンルに収まりきらない可能性のある音楽をアワードがきめ細かくすくい上げていく必要性を説いた。
