「MUSIC AWARDS JAPAN -Deep Insights-」第4回、インドネシア音楽シーンの“今”に迫る
国内最大規模の音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN」。音楽業界の主要5団体(日本レコード協会、日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、日本音楽出版社協会、コンサートプロモーターズ協会)が設立した一般社団法⼈カルチャー アンド エンタテインメント産業振興会(CEIPA)の主催により、「世界とつながり、音楽の未来を灯す。」をコンセプトに掲げて2025年に新設された。
2年目となる今年は、6月13日に東京・TOYOTA ARENA TOKYOで授賞式が開催される。昨年より規模を拡大し、主要6部門(最優秀楽曲賞、最優秀アーティスト賞、最優秀ニュー・アーティスト賞、最優秀アルバム賞、Best Global Hit from Japan、最優秀アジア楽曲賞)を含む全78部門が設けられた。3月にエントリー作品 / アーティストが発表されるとともに約5000人の音楽関係者による投票がスタート。4月30日にノミネート作品が発表され、最終投票を経て授賞式にて最優秀作品が決定する。
これに先駆け、MUSIC AWARDS JAPAN / CEIPAのYouTube公式チャンネルで新番組「OTOMO presents MUSIC AWARDS JAPAN -Deep Insights-」が展開されている。「今、音楽シーンでは何が起こっているのか?」をテーマに、MCを務めるハリー杉山が毎回異なる有識者をゲストに招いて各音楽ジャンルの“現在”を解き明かすトーク番組だ。
“インドネシアのグラミー賞”と称される「AMI AWARDS」の特徴
「最優秀アジア楽曲賞」をテーマに据えた第4回では、「インドネシア編」と題して同国の音楽シーンを特集。アジアのポピュラー音楽に高い関心を寄せるラジオDJの土井コマキがゲスト出演し、ハリーとともに現代のインドネシア音楽に迫った。
土井がアジア音楽に傾倒したきっかけは、2012年頃に旅行で訪れた台湾での体験だったという。現地のCDショップでサカナクションやbonobosといった日本のアーティストが大きく展開されている光景に感銘を受け、販売員から薦められたアーティスト・Sunset Rollercoaster(落日飛車)などの楽曲を聴いた結果、言語が異なってもグルーヴやメロディで共感し合える“言葉を超えて響く音楽の力”を再確認したのだと述べた。


番組には、インドネシア音楽シーンの“今”を伝える語り手として、同国の国民的音楽賞「AMI AWARDS」の会長を務めるミュージシャン / 音楽プロデューサーのチャンドラ・ダルスマン氏がリモートで出演。ハリーと土井による彼へのインタビュー形式で番組は進行した。
チャンドラ氏は、インドネシアが約700の民族と方言を持つ極めて多様性に富んだ群島国家であることが、音楽においても多種多様なジャンルの共存につながっていると解説。そうした背景がありながらも、インドネシア語という絶対的な共通語が存在することによって国としてのまとまりを生んでいると分析する。必然的に多くの楽曲がインドネシア語の歌詞で歌われている一方で、近年ではジャワ語を用いたポップスや、インドネシア東部のリズムを取り入れた楽曲など、各地域の独自性を取り入れた音楽もさかんに作られているという。それがグローバルに注目されているのだと語った。
約30年前に設立された「AMI AWARDS」は、“インドネシアのグラミー賞”とも称される音楽賞。60を超えるカテゴリーを設定することで、同国における音楽の広範にわたる多様性をカバーしているとチャンドラ氏は説く。例えば同国内で最もポピュラーなジャンルの1つだというダンドゥット(インド音楽やロックなどの要素を取り入れた大衆音楽で、日本でいう演歌のようなジャンル)は、日本人にはあまりなじみのない音楽でありながら「コプロ」や「カンプサリ」といった数多くのサブジャンルを擁し、同ジャンルだけで実に7カテゴリーの部門賞があるという。
また、土井が興味を示したのは「Children's Music(児童音楽)」カテゴリーの存在。チャンドラ氏によれば、インドネシアでは1980年代から90年代にかけて児童音楽が隆盛し、子供年代のアーティストが人気を博していたが、のちの西洋音楽の浸透とともに次第に廃れていったのだそう。そうした中、次世代を担う子供たちにふさわしい“子供による子供のための音楽”の制作環境を維持する目的で「AMI AWARDS」に同カテゴリーが設けられ、児童音楽文化を守っていくことが同アワードの重要な役割の1つになっていると説明した。

「最優秀アジア楽曲賞」にエントリーされたインドネシア楽曲3曲
そして3人のトークセッションは「MAJ」の話題へとシフト。昨年京都で行われた式典にも登壇しているチャンドラ氏は、同アワードにおける「最優秀アジア楽曲賞」の意義について「アジアの音楽を発展させるよい取り組みの1つ」だと高く評価する。今年の同賞にエントリーされたインドネシア楽曲3作品については、次のように解説した。
Silent Open Up「Tabola Bale」は、まさに先ほど言及されたようなインドネシア東部の土着的なリズムをベースに作られた楽曲で、言語の壁を越えてヨーロッパや北米、南米など世界中でバイラルヒット。昨年の「AMI AWARDS」では複数の賞を受賞しており、今のインドネシア音楽シーンを代表する1曲となっている。
Fourtwnty「Mangu feat. Charita Utami」は、Spotifyグローバルチャートにおいてインドネシア人アーティスト初のトップ10入りを果たした楽曲。国民の平均年齢が約30歳と人口に占める若年層の割合が非常に多いことで知られる同国において、彼らのような若者たちがコンサート業界を空前の隆盛に導いている。
.Feast「Nina」は、「AMI AWARDS」の常連にして現在のインドネシア音楽シーンを牽引する中心人物の1人である“インドネシアのVaundy”ことバスカラ・プトラ(Hindia)が手がけた楽曲で、同曲のリリックビデオはYouTubeで1億回再生を突破。Hindiaはソロアーティストとしても国民的なヒットソングを量産している。
日本の音楽にも関心を寄せ、中でもCreepy Nutsに強い感銘を受けたというチャンドラ氏。音楽は言葉を超えた“世界共通語”であると改めて力説した氏は、とりわけ日本とインドネシアのアーティストによるコラボレーションに期待を膨らませる。「それが新しい音楽を生み出すだけでなく、両国の友情を深める最良の方法になる」との見解を示した。