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ROSÉ & Bruno Mars「APT.」が世界中に広がった理由|「MUSIC AWARDS JAPAN 2025」主要部門ノミネートアーティストを解説

音楽業界の主要5団体が垣根を越えて設立した、一般社団法⼈カルチャーアンドエンタテインメント産業振興会(CEIPA)による国内最大規模の国際音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN」(MAJ)。この新たな音楽アワードの記念すべき第1回の授賞式が、いよいよ5月21日と22日に京都・ロームシアター京都で行われる。

先日一挙に発表された「MUSIC AWARDS JAPAN 2025」のノミネート作品 / アーティスト。MAJの公式メディアOTOMOでは授賞式の開催に向け、主要部門のうち最優秀楽曲賞、最優秀アーティスト賞、最優秀アルバム賞にノミネートされたアーティストや作品をピックアップし、その特長を紹介していく。この記事では「最優秀楽曲賞」にノミネートされたROSÉ & Bruno Marsの楽曲「APT.」をフィーチャーする。

文 / 宮崎敬太 

 

ROSÉ & Bruno Mars「APT.」は、ROSÉの1stアルバム「rosie」の先行曲として2024年10月18日に配信された。音楽のみならずファッションやライフスタイルまで世界中に大きな影響を与えるBLACKPINKのROSÉと、グラミーコレクターと言っても過言ではない問答無用のスーパースター・Bruno Marsのコラボレーションは、当然のことながらBillboard Global Top 200で初登場1位を獲得した(前週の1位はLady Gaga&Bruno Mars「Die With A Smile」だった)。「APT.」はその後、クリスマス週の2024年12月28日付まで9週連続で同チャートの1位を記録した。

「APT.」の強みはなんと言ってもフックの「아파트, 아파트(アパトゥ、アパトゥ)」につきる。“아파트”とは韓国の飲み会ゲームであるアパートゲーム(아파트 게임)で使われるワード。まず日本人は“飲み会ゲーム”に耳馴染みがないが、例えるなら山手線ゲームのようなもの。「APT.」にはアパートゲームのメロディとリズムをそのままフックに取り入れられている。バックトラックは1980年代前半にヒットしたトニー・バジル「Mickey」の弾き直し。ハイテンポな8ビートにキャッチーなフレーズをはめ込んだアイデアが「APT.」のストロングポイントであると言える。

だがそれ以上に重要なのは、イントロで「채영이가 좋아하는랜덤 게임(チェヨンの好きなランダムゲーム)」と話すように、この曲がROSÉ(=チェヨン)のパーソナルな楽しい体験を表現するために書かれたという点だ。世の中にパーティソングはごまんとあるが、「APT.」はこの世界にただ1人しかいないROSÉの体験が飾らずに表現されている。借り物でないからこそ、根底にあるポジティブなエネルギーも強固だ。またBruno Marsが参加したことでグルーヴの強度も増した。ユニークで、楽しい気持ちになれて、踊れる。一度聴けば誰でも口ずさめて、ミュージックビデオのダンスも1回観ればTikTokで真似できる。だから世界中に広まった。

MVの間奏部にROSÉとBruno Marsがアパートゲームで遊んでいるシーンがある。現代社会は絶えず分断し、混乱しているが、文化にはその懊悩を乗り越える力があるというメッセージが込められていると感じた。